2025.09.21
アシュラ
マンガ史に名を残す〝問題作〟がついに劇場アニメ化
作品に込めたテーマをさとうけいいち監督に直撃!!
「TIGER&BUNNY」のさとう監督が、ジョージ秋山の問題作「アシュラ」に挑む! 連載当時、その過激な暴力描写が問題視され、有害図書に指定されるなど社会問題を巻き起こした同作を、現代で改めて描き直す意味とは?
| ■作品紹介 「アシュラ」
9月29日公開 東映配給
日本史上最大の内戦、応仁の乱の最中に産み落とされたアシュラ。生きるために人を殺め、獣同然に暮らしていたが、心優しい少女、若狭や法師との出会いを通して、徐々に人としての感情を育てていく。しかしそれは、苦しみと悲しみの始まりでもあった。 |
この作品で〝生きる〟ということを
ストレートに伝えたかった
――はじめ、75分という尺を聞いた時はビックリしました。原作は〝発禁〟や〝カニバリズム〟などショッキングでネガティブなイメージが先行しています。それらを含めて、短い尺でちゃんとテーマを伝えられるのかと。
さとうけいいち監督(以下、さとう)「当初のシナリオでは、アシュラと若狭の『美女と野獣』みたいなお話だったんですよ。でも『アシュラ』においてカップル・ムービーということに違和感があって、なんか違うんじゃないかって。僕は『アシュラ』を読んだ世代ではないので、原作は参加に当って読んだのですが、作品を取り巻く環境とか横槍とかもあって、(作品自体に)フタをしようっていう空気もある中、ジョージ秋山先生が物書き、作家として主張したいことを、かい潜ってでもやろうという気持ちを感じて。それをどう表現するかという時に、一昨年の震災があって、がれきの下に埋もれている人間が、命があれば這い上がってでも〝生きる〟ためのことを〝やる〟ということが、原作の中にある部分のひとつなんじゃないかと僕は思ったんです。それで、生まれちゃいけないような時代に生まれた子供が、飢餓に苦しむ母親に餌のようにされた上に捨てられて、自分が人間だかなんだかわからない〝物体〟として生きているうちにお坊さんに出会う、という軸に沿ったシナリオに修正して、それに合わせて原作や当初のシナリオにあった枝葉のエピソードを切り落としていきました」
――確かに、大胆にエピソードを刈り込んでいることが功を奏しているように感じました。話がシンプルになった分、さとう監督のおっしゃる〝生きる〟というテーマがストレートに伝わってきます。また、過激なバイオレンス描写があるからこそ、よりテーマが引き立つようにも思いました。
さとう「水害のシーン含めバイオレンス・シーンに関しても、我々はそういうものを現実に見たし、体験した方もいるけど、そういうものを言葉やテロップだけで逃げるという方法もあったとは思います。でも、〝生きる〟ことの中にある〝痛み〟を知ることにならない。映画の中に、そういうつらい部分を入れ込むことによって、その後の状況がより伝わるということが重要だし(バイオレンス描写は)絶対に必要だろうと。それに『アシュラ』は、〝知る人ぞ知る〟作品になっていて、なおかつネガティブなイメージが世の中に出回っている。それを打ち返すためには、ストレートにアシュラが吠えていることがわかる、アシュラがいることによって、人が人であるということを再認識したり、生きなきゃいけないっていうことを見せたい、と思ったんですね」
――アシュラというキャラクターが〝異物〟として人間たちに影響を与え、そこで〝生きる〟という意味を問い直すということですね。真摯なメッセージをもっているからこそ、多くの人に見てもらいたい作品ですよね。これから見る人に、どのような部分を見てもらいたいですか?
さとう「この作品から、極限に置かれた時に、人が何を選択してどう変わるかっていうさまは見て取れると思います。飢饉が広がって見えてくる人の醜い部分、〝米一年分やるぞ〟って言われるだけで豹変するっていうこととか。でもそれは、極限状態に置かれた時の、自分の家族を守らなければならない時の背に腹を変えられない状態。報酬に釣られてアシュラを追い回す村人たちにしてみたら、アシュラなんて〝人だかなんだかわからない物〟と思ってるかもしれないし。そういう醜いところを含めて、すべてがきれいごとではないけれど、意外と人間って裸にするとこんなもんなのかっていうのが、アニメ作品でしかも短い時間の中で表現できたのかなと思います。本作は規制がつかなかったんです。親同伴でもいいから、小学生高学年の子たちには見てもらいたい。そういう思いで僕らもつくりましたよね。アニメーションってやっぱり子供が触れるものでもあると思います。どんなに大人向けのモノを作ったとしても。そういう思いがあって、コアなアニメ・ファンだけでなく、多くの人に〝生きる〟ということをテーマにしたストレートな作品が世の中にはあるんだよっていうことを『アシュラ』で伝えたかったんですよ」
©ジョージ秋山/「アシュラ」製作委員会






