インタビュー

2025.12.06

  • 箱入り息子の恋
    夏帆インタビュー

 

恋愛経験のない35歳のダメ男が初めての恋に全力投球するユーモラスでハートフルなラブストーリー「箱入り息子の恋」。星野源扮する主人公とともに、ひたむきに愛を育む目の不自由なヒロインを演じた夏帆が、演技の苦労や撮影の裏話を告白。気になる男性観もほんのちょっとわかるかも!?

 

■作品紹介

「箱入り息子の恋」

12月4日DVD&ブルーレイ発売
発売元/ポニーキャニオン
監督/市井昌秀
出演/星野源 夏帆

 

地味で内向的で潔癖性の35歳の市役所職員、天雫健太郎(星野)は、見かねた両親が代理見合いの末、奇跡的にゲットした美貌の社長令嬢、奈緒子(夏帆)との見合い話にいやいや応じることに。先方の父親にさんざんコケにされながらも、視覚障害者である奈緒子と人を“見る目”が似ていることを訴えた結果、彼女の反応は意外にも好感触。健太郎の気持ちは一気に盛り上がり、さまざまな壁にぶつかりつつ彼女との関係を深めていく。

 

目の見えない芝居はハードルが高かった

 

――カッコ悪いけどまっすぐな健太郎の情熱を受け止めるヒロインを演じるに当たって、奈緒子という人物をどんな女性と理解しましたか?

 

夏帆「一見、引っ込み思案というか、控え目なのかなと思いましたが、奈緒子は自分の思いをちゃんと言葉で相手に伝えられるし、逃げずに真っすぐ表現できる。それってすごいことですよね。私には絶対に無理なので…。大事に育てられた箱入り娘で、おっとりしているけど、芯はすごく強い女の子というイメージです」

 

――夏帆さん自身には、そういった要素はあまりないということ?

 

夏帆「奈緒子みたいにストレートに伝えるのは苦手ですね。“言わなきゃ、言わなきゃ、でも…”という感じ。言わなくてもわかってほしいと期待しているんですよね。奈緒子のセリフにあった“ちゃんと言葉にしてくれてありがとう”というようなフレーズも、普段の生活で言ったこともないですし、言われたこともないですけど、気持ちはちゃんと言葉にして伝えることが大事だなと改めて感じました」

 

――今回の役のためにピアノの特訓もされたそうですね。

 

夏帆「1カ月間練習しました。私はピアノが全然弾けなくて、楽譜も読めなくて、楽器の演奏経験もなくて、本当にゼロの状態から1カ月間練習して、どうにかなんとなく弾けるようになりました。ピアノを弾くシーンが私の最初の撮影で、それまで準備してきたことの発表会じゃないですけど、緊張してよくわかんない汗が出てきました。その時は“あぁ、この映画、大変になりそうだなぁ”と思っていました(笑)」

 

――ピアノ演奏シーンの撮影が終わったら、プレッシャーは多少緩和されました?

 

夏帆「いえ、その後も悩みながら、模索しながらやっていました」

 

――目が見えないお芝居はやはり大変でしたか? 演じる時に、相手役の表情に焦点を合わせてはいけないという条件的なハンデもあったと思いますが。

 

夏帆「そうなんです。目が見えない役というのも初めてで、ハードルが高くてとても不安だったので、実際に目の見えない方とお会いして一緒に遊園地で遊んだり、目の見えないヒロインが登場する映画を見たりと準備は一生懸命やったつもりなんですけど、撮影現場では、普段のお芝居でやりとりする時のように、相手の方の表情がこうだからこう返そうということができなかったんですよね。だからその代わりにセリフをきちんと聞こうというのは意識していましたね。短い撮影期間の中で、目の見えないお芝居と奈緒子という人物をつかまなきゃというのがあって、やらなきゃいけないことがたくさんあって、いっぱいいっぱいでした」

 

――特典のメイキング映像を見ると、撮影の順番がかなりランダムだったようですね。感情を盛り上げたり、健太郎と徐々に打ち解けていく演技のサジ加減は難しくなかったですか?

 

夏帆「出会いのシーンをクランクアップの日に撮ったりして、撮影順はけっこうバラバラでした。でも、それがよかったのかなと思います。事前に自分なりに考えて現場に入るんですけど、実際に動いてみると、脚本を読んで想像していたものとは違うふうに自分自身が勝手に動いたり、あぁ、こうなるのか~と思うこともよくあって、計算したものではない動作や感情が出てくる。映画には編集という工程もあるし、その場では何がベストかは自分ではわからないんです。ただ、撮影の時は、その前のシーンをすごく想像しながら演じるようにしていました」

 

――劇中では前半にあるお見合いシーンも、撮影順は後ろの方だったようですね。

 

夏帆「そうですね。それぞれの家族の親密さが自然な感じで出ているんじゃないかなと思います。奈緒子の両親役の大杉漣さん、黒木瞳さん、健太郎の両親役の平泉成さん、森山良子さん。みなさん切り替えがすごく早いんですよ。ギリギリまでワイワイ話しているのに、監督の“よーい”の声がかかるとパッと変わる。さすがです」

 

星野源=健太郎のイメージは、本人的にはNG?

 

――健太郎は典型的な非モテキャラクターですが、夏帆さんは脚本を読んだ段階で健太郎のことを、いいと思ったそうですね。

 

夏帆「35年間彼女がいなくて、毎日家と仕事場を往復するだけというところを見ると確かにパッとしないかもしれないけど、健太郎はちゃんと働いていて、外には出ないけれど自分の趣味もあって、すごく真面目だし優しいし、素敵だなぁと思います。でも、完成した映画で健太郎の弾けっぷりを見たら、“あ、やっぱり、けっこうすごい”と思いました(笑)」

 

――演じた星野源さんはいかがでしたか?

 

夏帆「ご本人は自分と健太郎は全然違うとおっしゃっていましたが、撮影中は、“これは健太郎なのだろうか? 星野さんなのだろうか?”と感じてしまうくらい役になりきっていらっしゃいました。うっかり“健太郎=星野さんというイメージですよね”と言ったことがありますが、“それは困る”と言われてしまいました(笑)。でも、この役は星野さんにしか演じられないんじゃないかと思うくらい、ピッタリはまっていて素敵でした」

 

――もともと星野さんのファンだったそうですね。

夏帆「はい。お芝居も見ていたし、私がTVの音楽番組に出させていただいた時に、ゲストアーティストとして来ていただいて、そこで初めてお会いしました。それからライブを見に行ったりして、今回作品として初めてご一緒させていただきました。すごく楽しかったです」

 

初恋に落ちた大人の感情の揺れ(=爆発)が見もの!

 

――タイトルは「箱入り息子の…」となっていますが、奈緒子も箱入り娘ですよね。健太郎との恋は、彼女にとっても初恋?

 

夏帆「きっと初恋だと思います。監督も“初恋”とおっしゃっていました」

 

――健太郎と奈緒子との関係を物語るうえで、ユニークな名シーンがありますね。2人が疎遠になった後、初デートの場所である吉野家に奈緒子がひとりで行って、泣きながら食事するシーンに思わずもらい泣きしてしまいました。

 

夏帆「その撮影はまだ3日目頃で、目の見えないお芝居をしながら、というところにまだ苦労していましたね。リハーサル中に気持ちが入りすぎて、本番でもう一度気持ちをつくるのが難しくて、時間をとっていただいてようやく演じられた場面です」

 

――キスシーンやベッドシーンも演じていますが、そのお芝居には迷いはなかったですか?

 

夏帆「いえいえ。星野さんの顔が近づいてきた時に、どこを見ればいいのかわからなかったです。どこを向くのか、それとも目はつぶるべきか考えてしまって。それに関してはリサーチしていなかったので、監督と話し合って、ベッドシーンには嘘があってもいいんじゃないかということになりました。それで2人の視線が珍しく合う瞬間もありますよ」

 

――ファーストキスのシーンでは星野さん主導のアドリブで2度もキスをすることになったようですが、問題は?

夏帆「問題って、“やだ!”とかですか(笑)? そのシーンの撮影の時、監督がなかなかカットをかけなくて、変な間ができて、“どうしよ?どうしよ?”と思っていたんです、そこで星野さんが即興で“もう一度いいですか?”というセリフをおっしゃったので、“あ、やられた!”という感じはありましたね(笑)」

 

――監督はどういう方でした?

 

夏帆「現場で俳優の意見をよく聞いてくださって、質問したことにも120%で返してくださる。すごく真面目でまっすぐで、ちょっと天然だったりして面白い要素ももっていらっしゃる。完成した映画を初めて見た時は、監督こそ健太郎じゃないか!と思いました」

 

――そうだったんですね(笑)

 

夏帆「健太郎のような内向きの地味な男性が恋愛感情を爆発させるところが、この映画の一番の魅力だと思うんです。とにかく一生懸命なところがいい。それに、健太郎だけでなく、奈緒子も恋によって自分の殻を破っていくところが素敵だし、世代が少し上の方なら両親の視点で見ても共感できる楽しい家族ドラマになっています。DVDとブルーレイにはメイキング映像や未公開シーンもあるので、本編を見て、特典映像を見て、また本編を見返すといった楽しみ方もできるので、劇場で見た方にももう一度見ていただけたら嬉しいです」

 

●プロフィール
夏帆
1991年東京都出身。’03年からTVCMなどで活躍。主演映画「天然コケッコー」(’07)で日本アカデミー賞新人賞を獲得するなど女優として高く評価される。その他の映画出演作は「東京少女」、「砂時計」(’08)、「きな子~見習い警察犬の物語~」(’10)、「劇場版タイムスクープハンター 安土城最後の1日」(’13)など。TVでも「オトメン(乙男)」シリーズ(’09)、「カレ、夫、男友達」(’11)、「ヒトリシズカ」(’12)、「みんな!エスパーだよ!」(’13)など多くの連続ドラマで主演やヒロインを務めている。2014年3月開幕の宮藤官九郎作の舞台「万獣こわい」が控えている。

 

©2013「箱入り息子の恋」製作委員会

取材・文/橋真奈美



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