インタビュー

2025.10.23

  • デッドマン・ダウン
    コリン・ファレル インタビュー

 

「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で名を馳せたデンマーク人監督ニールス・アルデン・オプレブ初のハリウッド映画「デッドマン・ダウン」。暗い過去をもつ孤独なヒットマン役で本作の主演を務めたコリン・ファレルが、共演のノオミ・ラパスや監督の演出、撮影秘話について語る!

 

■作品紹介

「デッドマン・ダウン」

10月26日(土)公開

プレシディオ配給
監督/ニールス・アルデン・オプレブ
出演/コリン・ファレル ノオミ・ラパス

 

裏社会に生きる寡黙なヒットマン、ヴィクターは、ある日、交通事故で顔に大けがを負った、向かいのマンションに住むフランス人女性、ベアトリスと出会う。2人で食事に出掛けた帰り道、ベアトリスが「あなたが人を殺した現場を見た。通報しない代わりに、私をこんな顔にした男を殺して」とヴィクターに殺人を依頼。弱みを握られたヴィクターは彼女の頼みを聞き入れることにするが、一方、彼自身にも果たすべき復讐計画があった。

 

ヴィクターとベアトリスの距離感や関係にはヒッチコック的要素がある

 

――出演を決めたきっかけは?

 

コリン・ファレル(以下ファレル)「この作品に魅力を感じた理由は脚本だった。ニールスが監督することもこの映画のもうひとつのエキサイティングな要素だが、それを知る前に、僕は脚本を読んでとても気に入ったんだ。キャラクターたちや描かれる因習が気に入った。僕が演じるヴィクターとノオミ・ラパス演じるベアトリスが住む地理的な配置も面白い。2人が必然的に近づくような距離感と2人の関係が始まる時のある種の覗き見主義的な要素でさえも興味をそそられた。そこには僕の好きなヒッチコック的な要素があったんだ」

 

――その、ヴィクターとベアトリスとの地理的な配置とはどういったものですか?

 

ファレル「2人はアパートの18階で、30メートルくらい離れたブロックに住んでいる。2人の部屋のベランダが向き合っているんだ。たぶん物語が始まる前から、3~4回ヴィクターはそのベランダで彼の方を見ている女性を見たことがあったのだと思う。そのうちに、ヴィクターのアパートで誰にも見られたくないようなことが起こる。その後、ベアトリスがヴィクターの郵便受けに、電話番号を添えた彼宛てのメモを残すんだ。彼は彼女に電話して、2人はディナーに出掛ける。彼は電話し、彼女が応答し、2人はベランダ越しに電話で話す。明らかにこの映画に、舞台となる暴力的な世界観が与える緊張感と暴力の可能性がはらんでいたとしても、このシーンを脚本で読んだ時、僕はとてもロマンチックだし、何て美しいアイデアだろうと思った」

 

――物語という部分ではどんな魅力を感じましたか?

 

ファレル「この映画はニューヨークの犯罪社会が舞台背景になっているが、その中にあるラブストーリーが強烈でとても深いものを感じた。アクション・シークエンスもあるし、それらのアクションはかなり複雑で、興味を引き付けられ、楽しめるものに仕上がっている。でも僕にとっては、僕が演じるヴィクターとノオミ演じるベアトリスのラブストーリーがこの映画の基軸なんだ。基本的にこの2人の物語が語られる。2人は修復できないほど傷ついていて、その結果、互いの人生に関わり、互いに癒されるチャンスを与えようとする。それが僕にとってこの物語の中で最も興味をそそられる部分だった」

 

――演じる主人公、ヴィクターについて教えてください。

 

ファレル「ヴィクターはハンガリーからの移民で、エンジニアとしての訓練を受け、7年前にニューヨークに来たことになっている。彼も世界中からやってくる大勢の人たち同様、より良い生活、より良いチャンスを求めてアメリカにやってきた。彼は夫であり父親でもあったが、映画の物語が始まる1年前に恐ろしい暴力事件が起こった結果、妻と娘を奪われてしまう。つまり、彼の人生にとって安定と、善良さと、純粋さの象徴だった人たちを、彼は失ってしまったんだ。その結果、彼はとても活気のない人生を、喜びの原因となるものを全て意識的に取り除いたような人生を送っている。だから、初めてベアトリスとイザベル・ユペール演じる母親が住んでいるアパートを訪れた時、彼は慈愛のある環境だと感じる。冷たい場所から温かい部屋に入ってきたような気がする。常にパンを焼いたり、レンジの上で食べ物を温める匂いが、感覚を刺激する。でもそれは彼が心地良さを感じるものではなかった。彼の人生に用意された時間でも場所でもない。でもそんな感覚が人の行動や、僕たちが自分の周りの視覚や、音や、匂いや、触れ合う世界を見る感覚に影響を及ぼす。それが彼のさらけ出したくない部分を開かせていくんだ」

 

――ヴィクターの部屋、ベアトリスの部屋、犯罪組織のアジトなど、セットもそれぞれに趣が違いますね。

 

ファレル「この映画にあるものは全て、ニールス・アルデン・オプレブの想像力とアートから生まれたものだ。それが彼の高い知能を通ってこの物語を語る上で大切なものを育む。ステージ上に建てられた2つのアパートは全部彼が創造した世界だ。そのアパートはニューヨークにあって、そこで外観は撮影した。でもステージにはそのアパートの内部セットが建てられたんだ。僕は昼休みにしょっちゅうそこに行った。周りには誰もいない。とても幻想的だったよ。物語のために祈りをささげる場所のように感じた。ニールス・アルデン・オプレブとニールス・セニエは驚くべきセットを創り上げた。僕たちの前に置かれたその美しい世界に生きるのが、僕たち俳優の仕事なんだ」

 

俳優として監督に抱きたいのは信頼感なんだ

 

――ノオミ・ラパスとの共演はどうでしたか?

 

ファレル「ノオミは素晴らしい。彼女は非常に聡明で、洞察力があって、とても大胆だ。明確な感情表現をする人だ。そして女性らしい愛すべき方法で俳優として相手役に挑戦してくる。彼女は自分のベアトリス像がよくわかっている。自分のベアトリスを作り上げ、見事に美しく詩的に、ベアトリスの内面と外面を表現する。ノオミと一緒にセットにいた時はいつもこの上ない喜びを感じていたよ。物語の中心にいるヴィクターとベアトリスを演じている時も僕が2人のシーンをどれほど楽しんで演じたか。その大きな理由は、ノオミと彼女のキャラクターに対する理解が彼女の周りの空間と僕たちが演じたシーンの数々を際立たせていたからなんだ。大きな喜びだった。彼女は素晴らしい。本当に素晴らしいよ。撮影が始まる前に何度かリハーサル期間をもてたんだ。たった3日間だったけれど、そこから2週間分の価値があるものを得られた気分だ。3日間、ロサンゼルスのホテルの部屋で、監督、ジョエル・ワイマン(本作の脚本家)、そしてノオミと僕で机を囲んだ。脚本のページごとに目を通していったんだ。この脚本ならそういった作業が全く必要ないと思ったけれど、僕たちはとにかく話し合い、ニールスが意見を出し、ノオミも僕も自分の意見を出し、ジョエルはそれを黙って聞いていた。ジョエルの意見はすでに脚本に書かれていたからね。だから彼は椅子にもたれて、僕たちの考えを受け止めていた。そこで脚本をほんの少しだが改良することができたと思う。個人的なレベルでほんの少しだけね。脚本には僕たちがやりたくないものは何もなかったけれど、少しだけある瞬間の視点を変えたり、あることを強調したりしてみたんだ」

 

――オプレブ監督との仕事はいかがでしたか?

 

ファレル「脚本を読んだあとに、ニールス・アルデン・オプレブが監督する話を聞いたんだ。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』は見ていたし、監督の別の映画『We Shall Overcome』(’06)も見た。美しい映画だが、映画のジャンルで言えば、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』とは正反対のジャンルだった。だからニールスならどんな題材でもうまくやれると思ったし、彼と一緒に仕事ができることを本当に楽しみにしていた。ニールスはすごい。早いうちから、彼と簡単明瞭なリズムを作れた。彼はいつも陽気だけど、厳しいし、妥協もしない。俳優として監督に抱きたいのは信頼感なんだ。完全に満足するまで決してそのシーンから動こうとしないニールスを、僕は信頼した。そして自分に問いかけるんだ。『どうすれば彼は満足するのか? それは僕の満足と同じなのか?』。でも彼は本当に賢い人だし、素晴らしい監督だ。それに容赦ない。彼は粘り強いんだ。早いうちから、この映画に真剣に取り組み、1年くらいずっとそれを続けてきた。とにかく細部にまでこだわる人だよ。演技は俳優に任せて構図やフレーム割りやカメラの動きや物語の語り口や、編集者がセットにいれば編集だけ気に掛ける監督もいる。それも素晴らしいし、とても重要なことだ。でもニールスは今言った全てのことに気を配りながら、鋭く興味深い演出と、本当に細かいことへのこだわりを見せる。シーンが一方向に進んでいると、彼は止めて俳優に180度違う方向に目を向けさせ、別の道を示す。僕はいつも『どうして、どうして、どうして?』と尋ねた。彼は常にできる限りの光を取り込もうとしていたんだ。テーマが非常に暗いから、彼は光を取り込み、1つの感情だけに囚われるのではなく、干満の差を付けようとしていた。彗星のような光の欠片が物語を走り抜けるようにしたんだ。でもニールスはキャラクターたち全員の間に生まれる交流を何よりも気にかけていた。監督だからもちろんそうあるべきなのは明らかだが、彼は本当にキャラクター全部の相互交流や行動にこだわるんだ。監督がそういった細かい全てのことに注意を向けることはほとんどないし、とても贅沢な感じがするよ。この映画の撮影期間は43日だったし、その間にやることがたくさん詰まっていた。セットも3つあって本当に豪華な主力作品だ。おまけにロケーションの移動も多い。スケジュールはとてもタイトだ。そういう全てのことをやり遂げなくてはというプレッシャーにも関わらず、僕はこの映画のクリエイティブな要素に妥協があるとは感じなかった。それはこの映画にとって何が大切か、何を捉える必要があるのかを理解するための、ニールスの独断的とも言えるアプローチが大きく物を言ったのだと思う」

 

●プロフィール
コリン・ファレル
1976年5月31日、アイルランド生まれ。演劇学校在学中にいくつかのTVドラマや映画に出演し、ジョエル・シュマッカー監督の「タイガーランド」(’00)でハリウッド・デビューを果たす。スティーブン・スピルバーグ監督の「マイノリティ・リポート」(’02)やオリバー・ストーン監督の「アレキサンダー」(’04)でスターとしての地位を確立し、「ヒットマンズ・レクイエム」(’08)ではゴールデン・グローブ賞コメディ・ミュージカル部門主演男優賞を受賞。その他の出演作に、「マイアミ・バイス」(’06)、「トータル・リコール」(’12)、「セブン・サイコパス」(’12)など。

 

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