2025.09.21
赤い季節
主演・新井浩文インタビュー
「ヘルタースケルター」でのヘアメイクアーティスト役も強烈! 今年は「ヒミズ」を皮切りに出演映画10作品の公開があり、役ごとに多彩な顔を見せてきた新井浩文。そんな彼が主演作「赤い季節」を通して、“演じることの深さ”について語ってくれた。
| ●作品紹介 「赤い季節」 10月13日(土)公開 thee michelle gun elephant(’03年解散)、ROSSO(活動休止中)、The Birthdayのフロントマン、チバユウスケによるソロプロジェクト、SNAKE ON THE BEACHの楽曲にインスパイアされて1本の映画が生まれた。普段はバイク屋で働きながら、殺し屋としての裏の顔を持つ健。だが“組織”を抜けようと決めた時から、彼の人生は一変する。「松ヶ根乱射事件」(’07)以来、約5年ぶりに新井浩文が単独映画主演を飾り、青春の苦悩と焦燥をスクリーンに刻みつけている。 |
主演のときは“作品を背負う”気持ちが圧倒的に強くなる
——まず音楽の話からしたいと思います。この「赤い季節」には、チバユウスケさんのソロプロジェクト、SNAKE ON THE BEACHのナンバーが全編に鳴り響いていますね。
新井「カッコいいですよねえ。劇中バンドのライブシーンもめちゃくちゃ良かった!」
——新井さんがかつて出演された『青い春』(’02)には、チバさんがボーカルだった thee michelle gun elephantの楽曲が使われていたので、感慨深かったです。
新井「映画を観てくださった方々は大方、そう言ってくれます。中には、監督まで一緒だと思われている方もいらっしゃいましたが(笑)。『青い春』は豊田(利晃)さん、『赤い季節』は能野(哲彦)さんです」
——能野さんは、’96年のデビューから’03年の解散までthee michelle gun elephantのマネージメントに関わってきて、現在もチバさんとお仕事をされている。今回、初監督に挑戦されたわけですが、能野さんとはお知り合いだったんですか?
新井「この映画で初めてお会いしました。初めに能野さん自ら書かれた台本をいただいて、その台本に対して率直に思うことをひとつだけ言わせていただきました。“セリフがちょっとハードボイルドすぎてカッコつけすぎなんじゃないでしょうか”って。小説みたいに文字だけであれば決め決めでもイイんですよ。でも実際に口にすると、浮き過ぎて、大変なことは経験上わかっていたので、忌憚なく感想を述べさせていただき、能野さんにお願いしてセリフを変更していただきました」
——では、出来上がったものは当初より、かなり決め決め度が抑制されている、と。
新井「最初の台本よりは、人間っぽくなったんじゃないかな。あと、うちがそのセリフを言っているのも大きいと思います。こういう殺し屋みたいに、いかにも架空の人物を演じるとき、うちは自分に近づける作業のほうが多いんです。役に近づこうとするのではなくて。語尾なんかも、普段使っている言い回しにして、自分に馴染ませる。それでもまだ、カッコつけすぎているところはありましたけどね(笑)」
——能野さんは初監督ですから、役者さん主導で現場が進んでいった感じですか。
新井「いやいや、主導は能野さんでしたよ! もう、頑固で譲らない(笑)。スタッフみんなが“ここはカットを割ったほうがいい”と言っても、“いや、俺は割りたくないんだ”と撥ねのけていました。でも監督はそうでなくっちゃ。撮りたい画を撮ればいいんです。ただね、完成作を観た後で話したら“アドバイスされた通り、あそこは割っとけばよかったかも”って(笑)。やっぱり映画は難しい……と思ったそうです。映画の人間からすれば“そりゃそうすよ”てなもんです」
——素直な反応がいいですね、能野さん。
新井「ええ。で、能野さん、こうも仰っていましたよ。“後悔はしていない。俺ができることは全部やった”って。ならば良かった、と、うちも安心しました」
——先ほどおっしゃられたように、殺し屋は架空の役柄に近いですよね。
新井「日本は銃社会ではないし、友達に“殺し屋がいる”なんて話、聞いたこともない。でも実は、それに近いことをやっている存在はいるわけで、そういう意味では役への距離感をつかむのが難しかったです」
——殺し屋役でガンアクションもある映画は、以前にもやられていましたよね。
新井「本作にも出演されている永瀬正敏さんと共に、殺し屋役をやった『ラブドガン』(’04)という作品がありました。あのときよりも今回のほうが撃ち合うシーンが多い気がする。能野さんの趣味、テイストですね」
——新井さん自身、撃ち合うことにある種の美学を感じることは?
新井「それはないですね。うち、電動銃でのサバイバルゲームをたまにやってるんですよ、友達と。ゲームだけど撃たれたら“死”を感じますからねえ。韓国に仕事で行った時に、“今後の仕事のために”って実弾を撃ったこともあって、火薬は抑えたヤツだったんですが、これが当たったら人は死ぬなと痛感しました。だから映画を観ていても撃ち合いに対しては基本的に“カッコいい”という感覚が湧かないんです」
——セリフ回し以外、新井さん発のイメージが加わった箇所はありますか。
新井「うちが演じた“健”が凄腕の殺し屋だってことを、観客に伝えやすくするために追加してほしいとお願いしたシーンはありましたね。それで“健”が過去に人を殺したシーンをひとつ入れるのと、あと、組織の兄貴分であるアキラ役、村上淳さんと銃をとりあう場面、あそこは当初は銃を構えるだけだったんですけど、一発撃ったほうが“健”が凄腕だってわかるんじゃないかと」
——珍しく撮影現場でモニターをチェックされたそうですね。
新井「うちは普段、絶対に(モニターを)見ないんですけど、ガンアクションは一種の型ですからね。今回はひたすらカッコ良さを追求しているから、監督のイメージと合ってるかどうかの確認で。ホント、能野さん、ガンアクションが好きなんです。後半、山の中でカサっと音がして、“健”が素早く構えるシーンがあるんですけど、ちょっと不自然な構えだと思ったんですがある西部劇の画像を見せられて、“この構えをして欲しい”って(笑)」
——殺し屋組織から足を洗おうとする“健”を引き止めるアキラ役の村上淳さんとは、「莫逆家族 バクギャクファミーリア」(公開中)に続く共演になりました。
新井「これまでも何度か共演させていただいていますし、現場でお互いを任せ合える、うちが心から信頼している先輩です。ほかにも田口トモロヲさん、泉谷しげるさん、風吹ジュンさん、御一緒した皆さん“映画の匂い”のする方々ばかりでリスペクトしています。大好きです」
——“健”と交流を持つことになる剛役には、“爆弾ジョニー”というバンドのボーカル&ギター、’93年生まれの新居延遼明さん。映画初出演なんですが、演技未経験ならではの瑞々しさを感じました。
新井「うちの『青い春』じゃないけど、デビューしたての頃って、たしかに“真っ白”だからこその味わいが出たりするんでしょうね。キャリアを重ねていくと演技はうまくなるだろうけれど、小細工を覚えたり、うちも含めて、“何かを失っているな”って気はします。今、『青い春』の“青木”をやれと言われても絶対できないですから。ただ、カメラの位置とか意識せずに感覚で察知してしまうのは、もはや仕方ない部分もあって。北野武さんとの話になりますけど、以前、『血と骨』(’04)に出演したとき、うちが親父役の武さんに包丁を突きつけるシーンで、カメラがあって、武さんは背を向けていらっしゃって、うちはカメラ方向を向いているんですけど、テストが終わってボソっと武さんが“それ、映ってないからもうちょっと上げたほうがいいよ”って。“えっ、カメラが見えてないのにわかるんだ!”って驚いたら、監督の崔(洋一)さんからも同じことを言われて、そうだよな、芝居ってやっぱり映ってないと意味ないんだよなあって改めて学んだんですよね。これは俳優特有のクセかもしれません」
——武さんの話題が出ましたが、北野武監督の新作『アウトレイジ ビヨンド』(10月6日公開)にも出演されていますね。北野組は念願だったそうで。
新井「いやあ、ここまで緊張するんだというくらい、現場で顔がずーっとヒクヒクと痙攣して(笑)。うち、緊張はどの作品でもするんです。とくに初日は。でもセリフが飛ぶなんてことは、『青い春』のファーストカット以来! 真っ白になった。武さんとのシーンで、“アニキのそばを離れるな”って超短いセリフ、今でも言えるくらいのセリフなのに飛んだんです。北野組の撮影のテストは代役の方がやられるんですね。その方相手に真っ白になりましたからね。スタッフは“あれ!? 新井、やたらに間をとってんな”と感じたみたいなんですけど、自分で飛んでるとは言えないから、どうしようと焦っていたら、カットがかかって、助監督の方から“新井君、間をもうちょっと”と指摘されてそこで“すみません、飛んでるんです”と告白して。皆さん、こんな短いセリフで飛ぶのかって空気でした(笑)。まあ、逆に良かったんですけどね。それがあってフっ切れたというか、せっかく北野組に呼んでいただいたのに、これじゃあダメだろって。もう好きなことをやってやろうと思って、アドリブも入れたりしました。Youtubeに前作『アウトレイジ』の罵倒シーン、“バカヤロー”“コノヤロー”が語尾についた場面ばかりを巧みに編集した動画があったんですよ。この『アウトレイジ ビヨンド』でもできるかもしれないと思って、うちのセリフに“バカヤロー”“コノヤロー”はなかったんですけど、自分で足しちゃったんです(笑)。それ、両方とも完成作に使われていました」
——では最後に。『赤い季節』の撮影現場も振り返っていただくと。
新井「ほかの現場と根本的に違うのは、うちは主演も脇役も両方経験していますが、主演のときって、やっぱり“作品を背負う”気持ちが圧倒的に強くなるんですね。脇役を演じるときにはいかに主演を邪魔しないようにするか、そこに徹する。今回はうちがブレたらダメなわけですから、その意味では覚悟が違いました。現在撮影中の『永遠の0』(’13年公開)の岡田(准一)君を見ていてもそうですね。まあ、主演の引っ張り方にもいろいろあって、うちは“行こうぜ!”というタイプではなく、とにかく黙々と“やってみせる”やり方なんですが」
——’63年生まれの能野監督は、世代的に西部劇やアメリカン・ニューシネマが大好きなようですけど、若い人がこの映画を観ると、新鮮に映ったりするかもしれないですね。
新井「うちは今、33歳なんですが、うちらが新鮮だと感じた映画を、上の世代の方に“そういうのは昔からあるよ”って教えてもらうことは多々あるし、下の子に対してもそう思うことはありますから、カッコいいことって形を変えて、繰り返されるんだろうなって。ただ今回は殺し屋の物語だけでなく、ひとりの人間の成長の話にもなっているので、チバさんの音楽と共に、五感で楽しんでもらえたら嬉しいです」
| <プロフィール>
あらいひろふみ 1979年青森県生まれ。’03年「青い春」で第17回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。映画を中心に多数の作品で異彩を放ち、’12年は本作のほか に「ヒミズ」「セイジ 陸の魚」「ライアーゲーム -再生-」「宇宙兄弟」「ヘルタースケルター」「闇金ウシジマくん」「莫逆家族 バクギャクファミー リア」に出演。「アウトレイジ ビヨンド」(10月6日公開)、「その夜の侍」(11月17日公開)も待機している。 |










