国家による思想検閲やメディア規制が横行する近未来の日本を舞台に、「本を読む自由」を守る“図書隊”の活躍を描いたSFアクション大作「図書館戦争」。その続編となる「〜THE LAST MISSION」のBD&DVDがリリース! 前作を凌駕するアクション、堂上&郁のラブストーリーなど、あらゆる面で本作に“進化”をもたらした佐藤監督のこだわりに迫った。
「図書館戦争 THE LAST MISSION」
3月25日(金)発売・レンタル
BD●4200円、4500円(初回限定生産版サウンドトラックCD付き)、8800円(プレミアムBOX)
DVD●3200円、3500円(初回限定生産版サウンドトラックCD付き)
監督/佐藤信介
原作/有川浩
脚本/野木亜紀子
出演/岡田准一 榮倉奈々 田中圭 福士蒼汰 西田尚美 橋本じゅん 土屋太鳳 相島一之 児玉清 松坂桃李 栗山千明 石坂浩二
堂上ら図書隊特殊部隊(タスクフォース)は、この世に1冊しか現存しない自由の象徴「図書館法規要覧」の一般展示が行われる“芸術の祭典”会場の警備を任される。一見簡単に見えたその任務だが、実は隊員・手塚光の兄・慧がタスクフォース壊滅を目論み仕組んだ罠だった。
堂上と郁の恋愛に発展するようでしないドギマギ感は本作の大きな魅力
――有川浩さんの原作は熱狂的なファンが多いことで知られますが、映画のほうも負けじと熱いファンを獲得しているように見受けられます。公開後の反響はいかがでしたか?
佐藤信介(以下佐藤)「Twitterの公式アカウントへの書き込みを読むと、何度も劇場に足を運ばれた人が多くて、僕の知る限りでは40回を超える方がいました」
――えっ! 40回も!!
佐藤「しかもそれが1人だけじゃなくて、20回、30回という方もいる。本当にありがたいことです。思うに『図書館戦争』はどこにもない場所のどこにもいない人物を描いています。だからその世界に浸りたいと思ったら『図書館戦争』を見るしかない、ほかに代わるものがないのかもしれません。僕が子供の頃には、ハッピーエンドなのに、終わると寂しくなってしまう映画との出会いがたびたびありました。当時はビデオすらない時代ですから、映画が終わってしまえばその世界は消え失せて、登場人物にも会えなくなってしまう。落ち込むぐらい寂しくなるのに、そんな映画が僕は大好きでした。今でも見終わった時に寂しくなる映画は、自分が監督するうえでの大切な指標になっています」
――メイキングを拝見すると、有川浩さんが何度か撮影現場を陣中見舞いされていますね。
佐藤「有川先生は現場の雰囲気がお好きなようで、何度も顔を出して熱心に見学されていました。正直なところ、第1作の時には作品を気に入っていただけるのか心配でした。特に『図書館戦争』はSFなので、映像化にあたってはキャラクターをはじめ、衣装や小道具も一からつくらなければならない。図書館や図書隊のあり方、作品の世界観がフィットしているかも重要です。試写をご覧になった有川先生はものすごく感激されて、僕たちに託してよかったと思われたようです。その時以来の信頼関係もあって『〜THE LAST MISSION』もとても喜んでいただきました」
――第1作の成功を受け、続編となる本作で新たに挑戦しようと思われたことはありましたか?
佐藤「作品のテーマや登場人物の関係性を第1作よりも別の意味で色濃く、アクセルを踏んで描こうと考えました。また、リアリティも強く指向していて、よく見ると両者は似て非なるものだったりします。第1作はどちらかというとファンタジックな色合いでしたが、続編ではそれが一瞬壊れかけます。ファンタジーの中に垣間見える、少々ぞっとするような亀裂を続編では描きたかった。しかし、第1作が好きな人にとって、それがトゥーマッチになってはいけない。その辺のさじ加減には続編ならでは難しさがありました」
――逆に、第1作から変えることなく守ろうと思われたことは?
佐藤「やっぱり岡田准一さん演じる堂上と榮倉奈々さん演じる郁のキュートな恋愛劇、恋愛に発展するようでしないドギマギ感は『図書館戦争』の大きな魅力で、同時に裏テーマでも表テーマでもある。僕は、一見『図書館戦争』の世界からは遠い存在のように思われますが、キュートな恋愛映画は大好きなんですよ(笑)。ちょっとした手の仕草、指の動きにハラハラするような胸キュン要素がうれしいことにこの作品にはあふれています。その特異性は大切にしたい。続編では2人の恋愛に深刻な危機が訪れます。過酷な状況とキュートな恋愛劇をいかに溶け合わせるかはかなり腐心したところです」
続編でやりたかったのは、図書館での戦争

――BD&DVDの映像特典に収録されるインタビューで、監督は「第1作でできなかったことを続編でやりたかった」とコメントされています。それは具体的にどのようなことでしょう?
佐藤「単純に言うと読んで字のごとし、図書館での戦争です。図書館と戦争は本来ものすごくちぐはぐで、決して相容れるものではない。でも、そのミスマッチこそがそもそも有川先生のアイデアの発端になっているような気がします。管理社会、全体主義社会の恐怖や愚かさを描いたSFはジョージ・オーウェルの『1984年』を筆頭にあまたありますけど、図書隊が武装して世界の自由を守る話なんてほかにはありません。第1作では図書館内で戦うシーンはあまりなかったため、今回は本格的に図書館での戦争を描くことをひとつの指針としました」
――第1作よりもさらに進化したアクションでは、その見せ方においてもやや異なる印象を受けました。アクションのテーマに違いはあるのでしょうか?
佐藤「続編で目指したのはよりハードでリアルな路線です。例えば、それまで統制が取れていた図書隊タスクフォースが戦闘の中で追い詰められていくさまを描くのもアクションのひとつのテーマ。その一方で、激しさだけではなくむしろストーリーの流れを重視している部分もあります。また、構成的には前半は会話での戦いが多くを占め、中盤からは肉体の戦いが最後まで続きます。戦闘シーンは結構長いんですけど、堂上と郁の関係をはじめ、その中にドラマを絡めていくこともポイントでした」
――佐藤組では画コンテを作るためにビデオコンテも用意されるそうですが、それはどのようなものでしょう?
佐藤「色々なシーンでビデオコンテを作ります。戦闘シーンなどは自分一人でカメラを持ち編集して作りますが、例えば、一番アクション的に複雑な、徒手、組み手のアクションは、アクションチームと作ります。まずストーリーラインで大まかな方向性を検討します。アクションのレベルはどれぐらいか、笑えるアクションなのか、地味だけどリアルなものにしたいのか、あるいは回し蹴りを入れてフィクション性を付与したりと、格闘系のアクションでも見せ方はさまざまです。かねてより組んでいるアクション監督の下村(勇二)さんと『このシーンはこういう感じだよね』とディスカッションを重ね、ほかのアクション・スタッフとも試行錯誤しながら細かいところまでつくり込んでいきます。だいたい流れができると僕や下村さんがカメラを回し、編集してビデオコンテをつくります。アクションにもお互いに好みがあるので、そういったことを事前に映像をもってして意見交換できるのがビデオコンテの利点です。つまり、撮影に入る前にはやることは何もかも決まっているんですね。もちろん役者さんにもトレーニングの段階からそれを見せて、演技の心もちも伝えたうえで繰り返し練習してもらいます。
ただ、岡田さんの場合はカリとジークンドーの師範でもあるので『ここはやり過ぎな気がする』とか『こうは絶対に動けないから、むしろこうじゃないか』とマニアックな話になってくる(笑)。全て自分でできるので『こうしたらどうか』『こんなふうにもできるけど』と細かいアイデアを出してくれるんです。そうやって岡田さんと下村さんが調整したものを僕が最終的に見て『じゃあそれでいこう』ということもありました」
――戦闘シーンに本格参戦となった榮倉さんも事前にトレーニングを積まれたようですね。
佐藤「榮倉さんは背も高いし、バスケなんかガンガンやっていたようなイメージですが、実はあんまり運動が得意じゃなかったらしいです。前作では思いのほか体が動かなくて相当悔しかったらしく、続編に備えて体を鍛えようと思い立ち、2年間ジムに通われたそうです。以前はできなかったことができるようになったのはもちろんのこと、トレーニングの成果はバッチリでした。今回の郁は激しいシーンも多く、戦いの真っ只中に放り込まれたり、最後は延々と走らなければならない。撮影中、何度も走らせたくないとは思いつつ(笑)、『ごめん、もう一回』と結局深夜まで何度も走ってもらいました。もしそこで榮倉さんがへばっていたらもっと時間がかかっただろうし、僕たちも辛くなっちゃいますからね。でも彼女は、体は絶対にきついはずなのに『はぁ疲れた』と言いながらも終始明るく笑っていて、その笑顔にはみんなが助けられました」
撮影が困難になることは分かっていたが、自分の欲望に邁進していった
――本作のクライマックスで“図書館での戦争”の舞台となる水戸の図書館(撮影場所は仙台にある宮城県図書館)でのアクションが壮絶です。
佐藤「実は宮城県図書館のほかにもうひとつ別の候補があったんですよ。今だから言えることですけど、宮城県図書館よりもそちらのほうが当初の脚本のイメージには合っていました。でも、図書館の中での戦いを純粋に考えると、絶対に宮城県図書館のほうがおもしろくなると考え方を変えました。蔵書点検期間にあたる2週間だけお借りできるということで、日数的に撮影が困難になることは分かっていましたが、思い切ってこちらに舵を切りました。宮城県図書館があまりにも素晴らしかったので、ここを使いたいという自分の欲望に邁進していったわけです。
図書館のユニークな構造を最大限に活かしていかにおもしろい戦闘シーンを構築するか? 実際に建物を見て歩き、脚本の野木(亜紀子)さんと話し合って『このシークエンスはここで、この会話はここで』といった具合に再度組み直していきました。同時に、軍事アドバイザーの方々には作戦の整合性を検証してもらったり、敵のトランシーバーを奪って情報を聞くといった実戦でもありうるアイデアも盛り込んでいます。特徴的なすり鉢状の階段に良化隊の隊員が居並ぶシーンなど、実際の現場を見て、生まれたものです」
――宮城県図書館での撮影は、キャストのみなさんが口を揃えて『超ハードだった』と振り返っています。
佐藤「自分がやりたいことをスタッフやキャストに伝えるため、かなり頻繁にロケハンに通い、現地とスタジオで撮影した素材を合わせてビデオコンテをつくりました。何をどうすればいいかの設計図を早めに決めて取り組んでいたおかげで、撮影時に迷うことは皆無でしたね。スケジュールの都合でバラバラに撮らなければなりませんでしたが、最後に組み上げたら必ず1本につながるとの確信もありました。それでもやらなければいけないことは気が遠くなるほどある(笑)。おまけに戦闘シーンは仕掛けも多く、最初と同じきれいな状態でお返しするための努力もかなり要しました。冬の仙台は本当に寒くて、みんな体中に使い捨てカイロを貼りまくっていましたね。日の出から夜の深くまでひたすら撮っていく感じでしたが、前作で培った関係性からか、そういう時の現場は笑いにあふれて団結が強まるんですよ」
――良化隊の銃撃で書架に並んだ本が粉々に吹き飛ぶシーンも圧巻でした。
佐藤「図書館における銃撃戦の象徴となるようなビジュアルとして思いついたシーンです。でも言うは易しで、やるとなったらとにかく大変でした。図書館側と交渉して『こういうシーンでこういうふうになるんです』と説明はできても『一回やってみます』というわけにはいかない。やるまでは誰もどうなるのか分からないわけです。本番の数日前から美術部がボランティアスタッフさんと共に書架に並んだ本を全部(5万冊分)入れ替え、弾着を仕込んだり、安全対策の養生といったセッティングを行いました。当然、入念に検証はしているんですけど、いざ本番となったら一回勝負。テストを何度も繰り返したうえで本番に挑みましたが、さすがに緊張しましたね。銃撃で本が飛び散るカットは複数のカメラで撮っています。僕も2階からEOS 5Dで狙いましたが、やっぱりドキドキものでした(笑)」
ワインのラベルはかなり時間と手間をかけてつくったのに、1カットしか映りません(笑)
――監督ご自身のお気に入りのシーン、もしくはBD&DVDならではの注目ポイントがあれば教えてください。
佐藤「お気に入りのシーンは、郁が堂上にトラックの中でプレゼントを渡すシーン、あと、今回どうしてもやりたかった、照明弾の下で2人がお好み焼きの話をするシーンは、個人的にも大好きですね。ソフトならでは見どころとしてはクライマックスの戦闘シーンはもちろん、細かいところにも注目してください。例えば、松坂桃李さん演じる手塚慧と郁がレストランで会った時に、ワインを引き合いに出して話をする場面があります。あのワインのラベルはオリジナルで、そこに描かれたアストレア(女神)は「正義の女神」。慧の思想と重なり合っています。美術スタッフとかなり時間と手間をかけてつくりました。1カットしか映りませんが(笑)、注目です。
また、この作品は邦画実写では初めてドルビーサラウンド7.1を採用し、セル版のBDに収録された7.1chモードでも細かい音の粒まできれいに再現されています。ご家庭に視聴環境が整っている方、もしくはそういう環境をもっている人の家に押しかけて(笑)、ぜひ音の素晴らしさも堪能してください」
――2016年は監督作の「アイアムアヒーロー」と「デスノート2016」が公開されます。このところエンタメ色の強いアクション大作を手掛けることの多い監督ですが、映画界で注目を集めるようになったのは「東京夜曲」をはじめとする市川準監督作の脚本家としてでした。今後、市川監督の流れを汲むような人間ドラマを撮る考えはおありですか?
佐藤「もちろん常々考えています。ただ、エンタメ色が強い大がかりな映画の中にも繊細なドラマは息づいていて、基本的に変わりはないと思っています。TVのスペシャルドラマ『図書館戦争 BOOK OF MEMORIES』はほとんど戦闘シーンがありませんし、アナザーストーリーと称して短編シリーズ『図書館mini戦争』も撮っています。時間がないなかで、なんで自分を追い込むようなことをやっているんだろうと思いつつ(笑)、でもやっぱり心に響くドラマが好きなんですね。
市川さんは僕が監督した『LOVE SONG』という小さな作品をすごくほめてくださいました。でも次に撮った初めてのアクション『修羅雪姫』の時には『佐藤がアクションを撮る必要ないだろう。これが佐藤の世界なのか』とおっしゃられた。対して僕は『いや、こういうのも好きなんですよ』と答えたのをよく憶えています。実際、僕は市川準も好きなら成瀬巳喜男もスピルバーグも大好きで、みんな同じ器の中に入っている。残念ながら市川さんは亡くなられましたが、今なら僕がつくった作品を見て『こういうのもありかもしれないな』と言ってくださるのではないかと密かに妄想しているんですよ」
■プロフィール
佐藤信介(さとうしんすけ)
1970年、広島県生まれ。「LOVE SONG」(’01)でメジャー映画初監督。映画「砂時計」(’08)、アニメ「ホッタラケの島/遥と魔法の鏡」(’09)の監督&脚本や、映画「GANTZ」シリーズなどの監督を務める。4月23日公開の監督作「アイアムアヒーロー」(’16)が海外映画祭で絶賛を浴びる。「デスノート 2016」が10月29日に公開予定。
●取材・文/佐々木優
(c) 2015″Library Wars-LM-” Movie Project

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