5月23日公開のコメディアン、関根勤の記念すべき監督デビュー作「騒音」。DVD&ブルーレイでーた6月号でも紹介している監督のインタビューを、決意までのひそかな苦悩や、マニアックすぎて気づかない!?オマージュ・ネタまで、ノーカットで紹介!
「騒音」
5月23日(土)公開
配給/スールキートス
監督/関根勤
出演/温水洋一 村松利史 酒井敏也 飯尾和樹 岩井ジョニ男
5人のオヤジ・ヒーローが地底人に立ち向かうさまを、106作の映画のオマージュを詰め込んで描くSFコメディ。地下工事の騒音に怒った地底人が東京都S区に現われ、有毒ガスで人々を襲撃。ガスが効かない5人のオヤジが地底人と戦うはめになる。
オヤジ3人のキャラを合わせると僕になる
チャンネルNECOの映画情報番組「映画ちゃん」で映画プロジェクトがスタートしたのが2012年8月。それから3年の月日を経て、ついに初監督作「騒音」が公開となる。
関根勤(以下、関根)「2013年に僕は60歳、デビュー40周年を迎えることになりました。強引だけど合わせて100だから、その記念に番組の中で僕と“ずん”の飯尾(和樹)君が1年間映画を学んでいって、最後に映画を撮る企画だったんです。1000万円の予算があると仮定したので『ずいぶん少ないなあ』なんて思いながら、ふざけた妄想の話ばかりしていました。で、結局は『そんなに簡単に映画は撮れませんでしたね』というオチか、もしくは10分ぐらいの短編を撮るものだと勝手に思い込んでいた。
ところが’13年の10月に、プロデューサーが『いよいよ撮影に入りましょう』と言う。最初は『ええっ!? ちょっと待って』ですよ。僕の30年来の友人で、いっしょに仕事もしている(脚本の)舘川(範雄)君が、今まで僕が無責任にしゃべったことを全部ストーリーにして、めちゃくちゃ面白い脚本ができあがっている。
でも『さすがに製作費は集まらないだろうな、やっぱり頓挫しちゃうんだな』と期待しないでいたら、所属事務所である浅井企画の社長が『昔、萩本(欽一)さんの時にも製作費を出したんだよ。関根君、出すよ』と。脚本はある、お金はある、キャスト&スタッフは揃えられる。もう逃げられなくなっちゃった。
まあそこからが地獄の日々でした。ちょうどその頃、大好きな園子温監督の『地獄でなぜ悪い』を観に行ったんです。打ちのめされましたよ。こんな映画を撮る人と横並びにさせられるんだ、遡れば黒澤明さんや深作欣二さんも監督という意味ではひとくくりですからね。いきなり現実に引き戻されました。
なのに、僕が芸能生活40年の中で最大のプレッシャーを感じているというのに、妻がいつもと変わらない。そのことに少し腹が立って『俺がこんなに苦しんでいるのに、どうしてそんなに平然としていられるの? 何か支えになるようなことばはないの?』と珍しく不満をぶつけたんです。すると妻は『だって、映画監督なんて誰でもできることじゃないんだから、とても幸せじゃない。撮りたくたって撮れない人はいっぱいいるのよ』と言う。
それで胸のつかえがストンと落ちました。『ずっと助監督をやっている人もいるし、プランがあって撮りたくてどうしようもないのに撮れない人もたくさんいる。そんな中で撮らせてくれるのは幸せなことだ』と気持ちが楽になりました」
小説やマンガの映画化、TVとの連動が主流となった日本映画界にあって、本作は完全オリジナル。さえないオヤジが地底人と戦う奇想天外な発想の源は?
関根「撮りたかったのは間違いなくコメディです。くだらないコメディ。僕は子供の頃からクレージーキャッツさんの“無責任”シリーズ、森繁久彌さんの“社長”シリーズといった、要するに底抜けに明るくて何のメッセージもないような喜劇映画を見て育ちました。それに、まがりなりにもお笑い畑で40年生きてきた人間ですから、コメディで勝負したいという思いはありました。
映画の主役は若くて二枚目が当たり前という既定路線をまず外れて、さえないオヤジが主人公の映画があってもいいんじゃないか。そこで、さえないオヤジたちがドラマティックに活躍するにはSFアクション・コメディがいいだろうと、日頃ストレスを浴びている彼らが、地底人に対抗できる体質をもっていたという設定にしました。いつもバカにされている人たちが、ある時期だけ輝くというアイデアは頭の中にずっとあったんですよ。
SFの場合、攻めてくるのはエイリアンが王道ですけど、どうしてもお金がかかる。エイリアンの造形や特殊メイクにしても、CGにしても一からつくらなければならない。でも地底人だったら土まみれの茶色の服を着て、マンホールから出てくるだけでいい。映画には当然、予算の縛りもありますから、低予算を逆手に取って面白いものをつくろうという目論見もありました。
今回、特殊美術を担当した新谷(尚之)さんは『映画ちゃん』で出会った方で、B級テイストをうまく表現してくれるんです。地底人のお面や銃、さらには不思議な象形文字も全部お任せでつくっていただき、なおかつ予算内にも収まって、本当に助かりました」
それにしても主役の3人、さえないオヤジを演じた温水洋一、酒井敏也、村松利史が一堂に会するキャスティングはスゴい。
関根「3人とも大好きだったので、彼らを押さえられなかったら映画は成立しないぐらいの気持ちでした。いちばん心配だったのは『キャラが被るから共演したくない』といわれる可能性です。3人ともそれは気にならなかったようで、快諾してもらいました。あとで知ったのですが、実はこの3人、初共演なんですよ。それを売りにしない手はないと、3人がそろった時に『初共演なんですってね』と喜び勇んで言ったら、村松さんが『普通こんなの3人呼びませんよ~、1人でいいでしょ~』って。
僕自身、3人は被るかなと思ったんですけど、みごとに被らなかった。微妙に違うんですよ。個性なのか役づくりなのかわからないですけども、まあスゴい3人です。演技の技術もさることながら、存在感そのものが絶妙なんですね。
(明石家)さんまさんに出演交渉した時に『どういう映画なの?』と聞かれたので『この3人が主役です』と答えたら『豪華やなあ。だけど地味やなあ』と。さんまさんも出演を快諾してくれて、つかみはOKというやつで、エースは冒頭に投入しています」
この3人は関根監督自身を投影したキャラクターでもあるようだ。では彼らの脇を、多数のお笑い芸人で固めた意図とは?
関根「3人とも僕の分身です。温水さんのセリフは僕が普段言っているようなことですし、家庭内で虐げられて怒られているところは全くいっしょ。酒井さんは、僕が青春時代ずっと女の子にモテなかったキャラそのままで、いまだ独身という設定。いつも文句ばかり言ってる村松さんは裏関根で、僕のダーク・サイドを演じてもらっています。彼らを3人集めると僕ですから。
お笑い芸人はコントをやっているので、コントはいわば縮小版のお芝居ですから、演じることに関しては慣れています。そうはいっても、俳優だけでやるコメディと、芸人だけでやるコメディはおのずと違うものになる。だから今回は、うまい俳優さんとコメディアンがいっしょにやるとどんな化学変化が起きるのか、両者の織り成すハーモニーみたいなものを追求してみたかった。これは結果的にうまくいって、合びきのハンバーグみたいにウシとブタのよさが出て、何ともいえない美味しさになりましたね」
千葉真一さんの顔力はスゴかった
プレッシャーをはねのけて迎えた撮影現場はどうだったのか?
関根「撮影が始まったら楽しくて仕方がなかった! こんなぜい沢があるのかというぐらい楽しくて、大げさな言い方をするといつ死んでもいいやみたいな。本当にいい経験をさせてもらいました。
実際のところ、演技にはいっさい注文していないんですよ。皆さん本当に優秀でしたから、脚本を読み取ってくれて、テストをするともう完璧。僕が想像した演技よりもはるかにうまいんです。だから一度も『こうしてください』とは言っていません。
ほとんどワンテイクで、僕は現場でクリント・イーストウッド監督と言われていました(笑)。唯一演出したのは、オヤジ5人がしごかれるシーンのしごき方だけですね。やられる側はうまいので、教官役の女の子たちには『手加減しないで本気でしばいて』とお願いしています。
教官長役の渡辺哲さんも大ファン。恐れ多くて出てくれるなんて夢にも思いませんでしたが、脚本を読んで『面白いね!』と言ってくださった。大ベテランですから脚本から全てを察知して、映画にぴたっとハマる演技をしてくださる。渡辺哲さんは見た目の迫力があって声もでかいから、しょぼいオヤジたちとの対比が最高でした。
特別名誉教官役で出演して頂いた千葉真一さんには『とにかく伝説の空手家をやってください』と、演技のリクエストは特にしていません。僕はモニターに映る千葉さんを見て『うわっ』ってのけぞりましたもん、あまりの迫力に。50年以上も第一線で映画に携わってこられて、おまけにハリウッドにも行っているから、画力というか顔力が違うんです。朝からつきっきりで1日がかりで撮影したんですけど、家に帰ったら疲れてすぐ寝ちゃいました。現場での圧がスゴいんですよ(笑)。7歳の頃から大ファンだった千葉さんを撮れたことが何より感動でした」
映像的にはどのような作品を目指したのか?
関根「日本映画、特に真面目なストーリーの映画は流れが緩やかなことが多い。僕はせっかちだから、ゆったりとした間が感性に合わないんですよ。園監督や深作監督ってテンポがいいじゃないですか。ですからカット割りのイメージとしては『CSI:科学捜査班』や『クリミナル・マインド FBI行動分析課』といった、米国のTVドラマみたいな感じ。なるべくそれに近づけるようにはやったんですけど、予算とかスケジュールとかいろいろな制約がある。
カットを多く割ろうとするとどうしても時間がかかってしまうけど、限られた時間で現場を進行するのも監督の仕事。ですので、ここはグループ・ショットでというような苦しい判断はありましたけど、編集でつなげてみたらそこまで気にはならなかった。
俳優陣への演出をしなかった反面、カメラマンの松井(宏樹)さんにはずいぶんリクエストを出しました。例えば千葉さんの顔も、オヤジたちをびびらせ、インパクトを出すためにも『とにかく迫力タップリのアップで撮ってほしい』とお願いしています。その他にもアップのお願いが多かったですね。また、千葉さんのシーンでは、メインのカメラの切り返しになるように、僕も手持ちでカメラを回しています」
わかりにくいけれど、「E.T.」へのオマージュもある
関根監督の100年メモリアルにかけて、古今東西の映画に100のオマージュを捧げる裏テーマも冒険的だ。
関根「オマージュに関しては僕の映画愛を総動員しました。3人のオヤジは『サボテン・ブラザース』のスリー・アミーゴスですし、5人になると『秘密戦隊ゴレンジャー』などの戦隊ものになる。さらに言えば、戦いのシーンはブルース・リーやジャッキー・チェンがつくったアクションへのオマージュでもある。
最終的に数えたオマージュは106個。こじつけも含めてですけど。だって飯尾君と奥さんが絡んでいるところを『これはブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの「Mr.&Mrs.スミス」へのオマージュだ』とか言ってますから。とはいえ黒澤明監督の『七人の侍』や『生きる』などは作品のテーマやストーリー、キャラクターやセリフなどでしっかりオマージュを捧げています。
映像面では、渡辺哲さんの教官長がオヤジたちを前に訓示を垂れるシーンはクエンティン・タランティーノ監督と『イングロリアス・バスターズ』へのオマージュ。ブラピが部下たちに話をする場面と全く同じように撮っています。ここはかなり研究した場面なので、ぜひ注目してください。
あと、これはわかりにくいので今のうちに公表しますが、僕が演じた医師が地底人のお面をはいで驚くカットのあとで、本来だったら地底人のアップに行くんですけど、S区の区長と飯尾君のアップを挿入しています。2クッション置いてもったいぶる。これは『E.T.』のカット割りと同じです。
ひとつ言いたいのは、この映画ではなんぴとたりとも死んでいないんですよ。これはディズニー映画へのオマージュです。残酷にはしたくなかったですし、誰も傷つかないところは自分でも気に入っていますね」
ところで、2作目の構想は?
関根「楽しかったのでぜひやりたいとは思っているのですが、プロの立場で考えると映画は本当にシビアな世界。だから今のところ96%オファーはないと思っています。ただ残り4%はお待ちしております(笑)。物好きな人がいて『日本映画にこの世界はなくちゃだめだよ』『俺が金を集めてやるよ』とお膳立てをしてくれて『お前に任せる』と言っていただけたら喜んでやりますよ!
これだけ面白い作品が撮れたので、個人的にも満足しているし、どこかでカルト的な人気が出ればいいですね。106のオマージュについても、パッケージ化の際にはぜひコメンタリーで解説したいな」
最後に“関根勤をつくった3本の映画”を聞いた。
関根「まずは“無責任”シリーズ。中学時代の僕は、このシリーズからコメディのセンスを全部いただきました。それと『燃えよドラゴン』も僕をつくってくれましたね。3本目は『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』。実は僕が主催するカンコンキンシアターは、こんなものをやりたいと思って旗揚げしたものなんですよ」
●プロフィール
関根勤(せきね つとむ)
1953年東京生まれ。74年に芸能界に入り、’82年までラビット関根の芸名で活動。バラエティ番組を中心に、舞台や映画など活躍の場面は多岐にわたる。近年では、TV「烈車戦隊トキュウシャー」(’14~’15)に車掌役で出演。
(C)2015騒音組合
取材・文/佐々木優 写真/HAJIME ヘアメイク/岩井マミ(M)












