本国、台湾で大ヒットを記録したグルメ・コメディ映画が日本公開に! おいしそうな台湾の宴会料理と、台湾の風習である戸外で開くお祝いの大宴会のようすが描かれる。笑って泣けて、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる作品だ。
「祝宴!シェフ」
11月1日(土) シネマート新宿他全国ロードショー
クロックワークス配給
監督・脚本/チェン・ユーシュン(陳玉勳)
出演/リン・メイシウ(林美秀) トニー・ヤン(楊祐寧) キミ・シア(夏于喬)
台湾南部の街、台南で伝説の料理人を父にもつシャオワンは、父の死で帰省し、母の食堂を手伝っていた。そこへ、大宴会での父の〝もてなし料理“をもう一度食べたいと言う老夫婦が訪れる。
台湾の伝統料理を紹介したかった
――「祝宴!シェフ」は料理人たちを描く映画ですが、料理を映画の題材にしようと思った理由を教えてください。
チェン・ユーシュン監督(以下監督)「私自身が食いしん坊で、食べることが大好きなんです(笑)。そして、みんなが観たい映画について考えたとき、料理はとてもいい題材だと思いました。また、台湾の伝統文化である辦桌(バンド=屋外宴会)は、最近ではだんだん廃れてきてしまったので、このままなくなるのは惜しいと思っていました。かつてはこの辦桌で食べられた“古早料理″と呼ばれる台湾の伝統料理を、ぜひ、紹介したいと思ったのです」
――映画にはたくさんの古早料理が出てきますね。
監督「実は台湾でも古早料理を食べる機会自体が減ってしまい、昔からの料理人がいなくなるとともに、料理も伝承されなくなってしまった。というのも、古早料理は作り方が複雑なので、敢えて作ろうとする料理人が今はあまりいないんです。実は私自身も、この映画を撮るまでは古早料理がどういうものかよく知らなかったんですよ。なので、古早料理の研究家やお年寄りの料理人にいろいろ聞いて、かなりリサーチしました。ヒロインのシャオワンと母親のアイフォンが劇中で作る古早料理は、作り方の難易度が高く、スクリーンに映したときに見栄えのするものを選びました。布袋鶏や菊花貝柱蒸しなどがそうです」
――監督ご自身は、辦桌に思い出はありますか?
監督「小さいころ、祖母に連れられて、辦桌の席に参加したことがあります。私が参加した辦桌は、何かの祝宴だったのですが、そういう席ではまず、5種盛りの前菜が出てきます。その中で私が一番好きだったのはピータンと腸詰です。私はそれが出てくるのを待ち構えていて、出てくるとテーブルの上を這うようにして料理に飛びついて食べていました。祖母には『やめなさい!』とたしなめられましたが…。そのころのことは、親戚が集まるとよく笑い話にされましたね。でも、その後は、あまり辦桌はみかけなくなったしまった。台北も私が子どものころはいまのようにビルがたくさん建っていなかったので、空き地があちこちにあって、そこをバンドの会場にしていました」
――実際はどのような時に辦桌が開催されるのですか?
監督「まずは誕生日ですね。おじいいちゃん、おばあちゃんなど、長生きしている人をお祝いするときとか。あと、台湾では子どもが生まれると1カ月のお祝いをするのですが、その際に辦桌の席を設けたりもします。祝宴だけでなく、お葬式や法事でも辦桌は開催されます。また、忘年会として年末に会社主催で社員全員に宴会料理をふるまうときに辦桌の出張料理人が呼ばれたこともあったようです。今でも台湾の南の方、特に台南では辦桌が盛んです。台南には廟(民間信仰のお寺)がたくさんあるのですが、廟のお祭りのときに辦桌を開いています。大規模なものも多く、道路を閉鎖して、道路全体を会場に辦桌を開くこともあります。まあ、そういうことは台北のような大都会ではできませんよね。台南ならではだと思います」
――辦桌が残っているので、台南を今回の主要ロケ地にしたのですか?
監督「そういうわけではありません。実際に、撮影しているときに、何度も辦桌を見ましたけどね。台南は台北に比べて気候が安定しているので、撮影がしやすいんですよ。住んでいる人たちも人情に厚くて、親切です。そして、美味しい食べ物が多い(笑)。そこも魅力ですね」
いつもおもしろいことをキャッチしたいと思っている
――伝説の料理人として描かれる蠅師、鬼頭師、道化師はユニークなキャラクターですが、どう生みだしたのですか?
監督「私は普段から周りの人々を観察するのが好きなのです。みんなに独特の個性があり、誰しもがおもしろい面を持っています。伝説の料理人を演じた役者さん(ベテラン俳優のクー・イーチェンとキン・ジェンウェン、監督としても活躍するウー・ニエンチェン)は、昔からよく知っている人たちなので、彼らのイメージを生かして脚本を書きました。また、彼らの作る料理にもキャラクターのイメージが投影されています。例えば、鬼頭師は幻想的なキャラクターなので、料理も現実味のない、ちょっとぶっ飛んだ感じの料理にしました。鬼頭師が作る料理は創作料理なので、私自身が考えました」
――ヒロインたちを助けるオタク3人組、召還獣もおもしろいキャラクターですね。
「そうですね。この3人のうち眼鏡をかけている2人は、私が監督したCMに出演してもらったので、やはり、以前から知っていました。でも、残る1人を演じる俳優が、実はなかなか決まらなかった。今回の作品では、この召還獣以外にもたくさんのオーディションをして出演者を決めたのですが、もっとも難航したのが、召還獣の最後の1人のオーディションでした。私には召還獣の確固たるイメージがあったので、それに当てはまる俳優を探し出すのが、本当に大変でした。スタッフからは召還獣を2人組にすればいいじゃないかと言われましたが、どうしてもこれは3人じゃなくちゃいけないと思っていました。そして、最後の最後に彼が現れたんです。彼はこの役そのものの人でしたね。おとなしくて真面目そうなのですが、何もせずにそこにいるだけで、なぜかおもしろい。そして、すごくシャイな感じなんです。そこが気に入りました」
――アイフォンを演じるリン・メイシュウさんは今や台湾ドラマに欠かせない女優ですが、彼女を起用した理由は?
監督「メイシュウさんとは10年前にCMの仕事を一緒にしました。その後、彼女はブレイクし、台湾で人気の女優さんになったんです。彼女はとてもいいキャラクターを持っていてCMの仕事をしたときに好感を覚えました。活発で楽しくて、まさにアイフォンのような人です。もちろん、役者さんとしても素晴らしい。いつか映画の仕事をする日がきたら、せひ、一緒にやりたいと思っていました。ですから、今回、この『祝宴!シェフ』を撮ることになり、重要な役に起用したわけです」
――映画に話を戻しますが、本作の145分という尺は、コメディーとしてはかなりの長尺なのでは?
監督「脚本を書いているときは、こんなに長くなる予定ではなかったのですが、だんだん長くなり、最初の編集では3時間になってしまいました。そこで一度は120分に編集し直したのですが、なんだかあまりおもしろくない。試行錯誤して145分に落ち着いたのです。私の映画はテンポが速いので長くは感じることはないのではと思っています」
――最後に監督ご自身の映画的なルーツを教えてください。やはりコメディ映画がお好きなのでしょうか?
監督「よく観たのは、台湾ではホウ・シャオシェン、香港ではウォン・カーウァイの作品です。日本の監督では小津安二郎や北野武の作品をよく観ます。特にコメディ映画を好んで観ているということはないですね。でも、自分で映画を撮るとなると、これは私自身の個性の問題なんでしょうが、常におもしろいことを敏感にキャッチしたいと思っているし、コメディを撮ることが身についているようです」
●プロフィール
チェン・ユーシュン
1962年台湾・台北生まれ。’95年「熱帯魚」で長編監督デビューし、’87年の「ラブゴーゴー」が“台湾ニューシネマ”と呼ばれ高く評価された。その後CMに活躍の場を移し、数々の賞を受賞。本作は待望の長編映画となる。
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取材・文/青木純子












