楽しい雰囲気から破滅へと向かう、哀しい青春グラフィティ
■今月の一本
クロニクル
■見せたい相手
まだHをしたことのない、悩める男子高校生
全米で予想外の大ヒットだの、日本でも2週間限定から拡大公開に至っただの、その評判は耳に入っていたんです。いちばん気になっていたのは、「まるで『AKIRA』の実写版だ」という感想。僕ね、大好きなんですよ! 大友克洋さんのあの傑作漫画が。なので見ちゃいました。もう期待度MAXで…。
声を大にして言います。それ、本当じゃないですか! ものすごい影響を受けてますね。特に念動力に目覚めた登場人物のひとりが終盤、街で暴走をするところなんかは「AKIRA」の超能力少年、鉄雄に「オマージュを捧げました」ってシーンになっていた。とにかく演じているその主人公の風貌が鉄雄っぽい。錯乱し怪物化していくあたりの世界観も似ていましたね。
いやあ、マジでおもしろかったです。高校生3人が、昔の「超能力学園Z」みたいに突然授かったチカラで最初はスカートめくりとかイタズラとかして、キャッキャッと戯れている楽しい雰囲気から次第に、破滅へと向かっていくのが哀しくて。よくできた青春グラフィティになっているんですよねえ。
出ている役者は、全員知らない人たちばかりなんだけど、それがかえってよかった。まったく前情報がないから、役柄のまま見られるっていうのがデカくて、洋画でも有名な人が演じていると先が読めちゃうし、「今回はこういう感じの役づくりね」みたいな邪念も浮かんじゃうじゃないですか。
監督は28歳の新人だそうですが、大したもんです。まあ、3人が触れる謎の物体の正体とか、“主人公が撮影した記録映像”というスタイルがブレる部分だとかは少々荒削りですけど。でも「もしも超能力があったら」はいつの時代もアガる設定。それを見せてくれるのは映画としてすごく正しい。続編の可能性もあるそうで、楽しみです。
で、誰に見せたいか。これはシンプルに高1くらいの、まだHをしたことのない男子。あるいは「全然モテない」「うだつが上がらない」「学校で友達ができない」と悩んでいる人が見るのがいいかなと。
高校生の時点でこれ見て、グッとくる人は、けっこう今後の人生が花開くタイプですよ。なんかこう、人の痛みがわかるというか、人生の機微、真髄に若くして触れておくと、絶対にいい。ちょっぴり「キャリー」も入ってますからね。イジメられっ子の怒りが爆発するリベンジもの。スカッとはしないけど、ちょっとは溜飲が下がるかも。
それから芸人枠ではスギちゃんにもオススメしたい。「ワイルドだろ?」で一気に注目されてね、得体の知れないパワーを身につけた男。ところが周囲がすごいスピードで動き出してしまい、自分のパワーを制御できず、どうすることもできなくなる。あがいたところで、その置かれた状況を変えることはできない。これはスギちゃんに限らず、芸能界の人一般に当てはまるんですけどね。売れることも落ちることも自分ではコントロールできない。人はあるパワーを手に入れたとき、それを制御できるのかどうなのか…?
もし僕も、何かチカラを得られるんだったら、やっぱり同じくサイコキネシス、念動力がいい。古くは「サイボーグ009」、それから「AKIRA」や「幻魔大戦」とか、昔からアニメも映画も、ホント、こういう特殊能力系は大好きで、「自分がもし超能力者になれたら何がいいか」とかよく夢想してたんです。
本来ならね、「週刊少年ジャンプ」方式で、主人公の前に強い相手が出てきて倒し、さらに強い相手が出てきて、また倒し…っていうのが、やっぱりワクワクする。特殊能力をもったヤツは戦わないと。そう思うんですよ。でもこの映画にはそういうスッキリ感はない。なんか屈折している。で、「それもありだな」って納得させられちゃった。
なかなか深い映画なんですよ。高校生3人が主要人物だけど、いちばん能力を使いこなしてないヤツに最後、スポットが当たるんですよね。きっとアイツには、監督自身が投影されていると思う。ところどころ、シニカルな視点が入っていて、超能力を手に入れても人間性が変わらなければモテないとかシビアだなあって。せっかくの念動力も家庭環境の劣悪さには無力だし。このシニカルな視点を共有できる人に向けてつくっているような。けっこう底意地の悪い映画でもあるなあって思いましたね。
「クロニクル」
もしも普通の高校生が超能力を使えたら…。監督も俳優もほぼ無名ながら、インパクトのある予告編が話題を集め、世界中で大ヒットを記録したSF映画。主人公は、謎の物体に触れたことで念動力を身につけた高校生3人組。最初は能力を使って軽いイタズラを楽しんでいた彼らだが、しだいにそのチカラに翻弄されていく。
監督/ジョシュ・トランク
出演/デイン・デハーン アレックス・ラッセル マイケル・B・ジョーダン
DVD&ブルーレイ/20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
■プロフィール
1973年、埼玉県出身。’93年に日村勇紀とお笑いコンビ、バナナマンを結成。俳優の仕事も多く、「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」(’10)で映画初主演。現在、フジテレビ系「ノンストップ!」の司会を務める
■バナナマンinformation
フリートーク&ノープランロケ企画を収録した「バナナ炎炎 炎の大炎上セレクション」DVD-BOXが発売中。また、8月に東京・俳優座劇場で行なった単独ライブ「Cutie funny」のもようを収めたDVDが2014年1月15日にリリース!
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撮影/諸永恒夫













