• 第十八回 年の瀬にオススメの一作 「東京ゴッドファーザーズ」【後編】

  • 2026.01.13

黒木華が“華”(=ハイライト)と“実”(=テーマ)を合言葉に気になる映画を語る、本誌好評連載のロング・バージョン。今月のお題は、ストレートに【クリスマス映画】。でもチョイスは意外な一本…?

 

主人公3人の中でもし声をアテるなら、ハナちゃん

 

――にしても、本当に「東京ゴッドファーザーズ」の登場人物たちは、それぞれ個性的で。

 

黒木 お芝居でも「走る、歩く」といった、ちょっとした動作からキャラクターを掘り下げることがあるんですけど、今さんは一人ひとりの人物を細部まで見つめて、キャラクタリゼーションしていらっしゃるということが、作品を見るほどに実感していて。声もそれぞれ、あらかじめ決めてある中で人物造形したかのような印象を受けるんですよね。いったい、どういうプロセスを経てキャストが決まったんだろう、と考えたこともありました。

 

──さきほどおっしゃいましたが、「おおかみこどもの雨と雪」で声のお仕事をなさっていますけど、やはり難しいものですか?

 

黒木 キャラクターの感情の振れ方というのはすでに決まっているので、自分は声でどんなふうに振れていくかを表現する、という感じでした。アフレコの時には、まだ絵が完全にはできあがっていなかったんですけど、それでも表情がはっきりわかるだけで、芝居の糸口になるんですね。絵があるのとないのとでは、全然違うと思います。

 

──なるほど。ちなみに、「東京ゴッドファーザーズ」のメイン3人の中で、1人声をアテられるとなったら、誰がいいですか?

 

黒木 えぇっ…そうですね、やはりハナちゃんですね。キャラクターが大好きなので。でも、梅垣さんの声が刷り込まれているので、自分でも違和感を覚えてしまいそう(笑)。

 

──黒木さんバージョンも聞いてみたい気もします(笑)。あと、話がちょっと飛びますけど、ムーンライダーズの音楽もまたいいんですよね。

 

黒木 そう、すごくいいんです! 鈴木慶一さんのインタビューを読んだんですけど、今さんから「第九」を使ってほしいという依頼があったそうなんですね。では、どうアレンジしようかと考えて…セッションふうにしていったと。そのアイデアと発想も素敵だなぁって…どこをとっても褒め言葉しかないですね、この映画は本当に。

 

──いやぁ、作品への愛、しかと受け取りました! では、2014年最後の“華と実”をお願いします!

 

黒木 映像の繋がりや疾走感、そしてアニメでしか表現できない絵の美しさが“華”だと思います。“実”は、物語そのものですね。クリスマスからの数日間、キャラクターが入れ替わり立ち替わり登場しますが、ちゃんと全員が印象に残っている。年の瀬にオススメの一作です。

 

──はい、まさに’14年も暮れようとしていますが、振り返ってみて、どんな1年でしたか?

 

黒木 「小さいおうち」で幕を開けた1年ですが、思い返すとたくさんの作品に呼んでいただきました。もっとも印象的なのは、ベルリン(国際映画祭で銀熊賞を受賞)へ行ったことですね。それから、6月には「赤鬼」でずっと立ちたいと望んでいた青山円形劇場の舞台に立てたことなど、忘れがたい出来事も多く、充実した年だったと思います。

 

──3月の誕生日で25歳になられるんですよね。祝・四半世紀です!

 

黒木 あらためて言われてみると、確かに特別と言いますか、ちょっとした節目に感じますね。実際に誕生日が来てみると、わりと普通に過ぎていってしまうのかもしれませんけど(笑)。

 

──2015年も1月の「繕い裁つ人」を皮切りに、毎月1作ずつ出演作が公開されますし、4月にはTBS系連続ドラマ「天皇の料理番」への出演も決定していますね。そんな新年ですが、どんなふうに歩んでいきたいですか?

 

黒木 1月に「繕い裁つ人」、2月に「幕が上がる」、3月に「ソロモンの偽証」と公開が続くので…いまだに緊張してしまう舞台挨拶をどうやって無事に乗り切ろうかと考えているところです(笑)。真面目な話、これまでは演じることに精一杯だった映画の現場でも、芝居を楽しめるようになってきたので、もっと面白味を追求できれば、と。新しい年も素敵な人や作品との更なる出会いに恵まれるよう、願っています。

 

東京ゴッドファーザーズ(’03)
3人のホームレスが聖なる夜に出会った奇跡
クリスマスの夜、3人のホームレスが捨てられた赤ちゃんを拾う。子供の親を探して東京中をさまよう彼らに、やがて思いもよらぬ〝奇跡〟が訪れる。’10年に亡くなった「千年女優」(’02)、「パプリカ」(’06)の異才、今敏による心温まる人間讃歌

監督・原作・脚本/今敏
声の出演/江守徹 梅垣義明 岡本綾
BD&DVD/ソニー・ピクチャーズ

 

<PROFILE>
くろきはる
1990年3月14日、大阪府生まれ。NODA・MAP番外編「表に出ろいっ!」(’10)で本格デビュー。「小さいおうち」(’14)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。映画待機作は「繕い裁つ人」(1月31日公開)、「花とアリス殺人事件」(2月20日公開)、「幕が上がる」(2月28日公開)、「ソロモンの偽証 前篇・事件」(3月7日公開)、「~後篇・裁判」(4月11日公開)、「母と暮せば」(12月12日公開)。TVドラマ「天皇の料理番」が’15年4月~TBS系にて放送予定
最新情報は公式サイトへ http://www.tokyo24.jp/artist/kuroki/

取材・文/平田真人 撮影/石川信介 スタイリスト/井伊百合子 ヘアメイク/北一騎