第十回 巨匠ポランスキーの傑作処女作をチョイス 「水の中のナイフ」【後編】
- 2026.05.07
黒木華が”華”(=ハイライト)と”実”(=テーマ)を合言葉に気になる映画を語る、本誌好評連載のロング・バージョン。今回のお題は【ポーランド映画】。鬼才ロマン・ポランスキーが祖国で撮った傑作をセレクト!
人生の機微を感じさせるラストの余韻に、いろいろと考えさせられました。
──深読みしていくとおもしろいですよね。ちなみにデビュー作つながりで言いますと、黒木さんの映画初出演作「東京オアシス」も章ごとの登場人物は極めて少なく、またシチュエーションもそんなに変わらないという点で「水の中のナイフ」との共通点が散見されますね。
黒木 言われてみれば…。「東京オアシス」は長回しで撮っているので、それまで舞台でのお芝居をしてきた私でも、素直にカメラの前に立てたことを覚えています。
──過去の出演作を見ることってありますか?
黒木 私はめったに見ないです。というのは、どうしても自分の芝居を反省することに終始してしまいそうなので──。もっと年齢を重ねて、「若い時を振り返ってみようかな」という心の余裕が生まれて初めて、素直にひとつの作品として見ることができる気がしています。
──いずれ、「東京オアシス」についてじっくりと語っていただく機会があるやもしれません!? また、登場人物が3人という点では、NODA・MAPの舞台「表に出ろいっ!」とも共通しているんですよね。
黒木 それぞれに信奉しているものが違っていて、それを守るために家族3人が戦うというお話でしたが、状況によって2対1の図式になり、その組み合わせも変わっていくという構造も共通しています。しかも家の中だけで物語が進んでいく、ワンシチュエーションであるところも同じです。登場人物が少ないと顔と名前を覚えやすくていいですね(笑)。シェイクスピアの戯曲などでは、時折「あれ、彼は誰の弟だったかな?」と混乱してしまうことがあります…。
──確かに! それでは、「水の中のナイフ」の”華と実”を挙げていただきたく。
黒木 どこを切り取っても美しく見えるモノクロームの画、そして社会主義政権下という時代背景を、さりげなく人間関係に落とし込んだ見せ方が”華”だと思います。また、安定と引き替えに先の見えた人生を送るアンジェイ、不安定だけれども自由と可能性を手にしている若者を、当時の東側と西側の象徴とも解釈できる描き方が、”実”ではないかと。
──なるほど、言い得て妙です!
黒木 丁字路を前に夫婦の車が止まり、引いて終わるラストも象徴的です。人生の機微を感じさせる余韻に、私もいろいろと考えさせられました。男女の関係性というのは、人にとって永遠のテーマなのだろうな――と。
| <PROFILE> くろきはる 1990年3月14日、大阪府生まれ。NODA・MAP番外編「表に出ろいっ!」(’10)で本格デビュー。「小さいおうち」で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。現在放送中のNHK連続テレビ小説「花子とアン」では主人公の妹、安東かよを演じている。その他の待機作に、映画「繕い裁つ人」(2015年1月公開) 最新情報は公式サイトへhttp://www.tokyo24.jp/artist/kuroki/ |
取材・文/平田真人 撮影/石川信介 スタイリスト/井伊百合子 ヘアメイク/北一騎








