• 第十七回 料理と人生の美味しい関係 「ジュリー&ジュリア」【前編】

  • 2025.12.01

黒木華が“華”(=ハイライト)と“実”(=テーマ)を合言葉に気になる映画を語る、本誌好評連載のロング・バージョン。今月のお題は「料理がモチーフの映画」。女流監督ノーラ・エフロンの遺作となった「ジュリー&ジュリア」をオーダー!

 

ジュリーが料理を通じて成長していく姿が、何とも愛おしく感じました。

 

──突然ですが…いわゆる「最後の晩餐」を迎えようという時、黒木さんは何を召し上がりたいですか?

 

黒木 実は「小さいおうち」の時に山田洋次監督ともその話をしまして、私は梅の茶漬けを食べたいと答えました。

 

──それは何ゆえなんでしょう?

 

黒木 胃もたれしたまま人生を終えたくないので、さっぱりしたものを最後にいただこうと…。それに、“シメ”はやはりお茶漬けかな、って(笑)。ちなみに、山田監督のお答えはステーキでした。

 

──人それぞれ、なんですねぇ! ということで、今月のお題は「料理がモチーフの映画」です。黒木さんの“オーダー”はノーラ・エフロン監督の遺作となった「ジュリー&ジュリア」ですが、これについては?

 

黒木 登場する料理がどれも美味しそうであることと、物語のメインとして描かれていることから、この作品に決めました。「かもめ食堂」やジブリ作品などもそうですが、観ていて思わずお腹が鳴る映画だな、と。冷戦時代にフランス料理のレシピをアメリカ人に向けて本にした女性ジュリアと、そのレシピをコンプリートすることを目標に料理をブログにアップしていく現代女性のジュリーの日常を、料理でつないで見せていくというのも、おもしろいですよね。

 

──「めぐり逢えたら」のエフロンらしく、男女の機微も描かれていますね。

 

黒木 ジュリアと旦那さんのポールの関係性は理想的だなと思いました。前向きで明るく負けず嫌いのジュリアを、ポールは誰よりも理解している。レシピ本の出版に難航しながらも夫婦で挑戦しつづける姿と物語の要となる料理が、それこそいい具合に“調理”されていて、素敵だなと思いました。

 

──あ、ウマイなぁ(笑)!

 

黒木 (笑)。ただ、感情移入するのは、やはりジュリーの方ですね。途中で挫折しそうになってワーッとなってしまったり、自分が原因で旦那さんとギクシャクしてしまったのに、素直になれなかったり…。でも、そんな2人の関係を修復するのが料理であるというのもまた、味わい深いなぁ、と。そんなふうにしてジュリーが料理を通じて成長していく姿が、何とも愛おしく感じました。

 

──ちょっとネタバレ領域に足を踏み入れると、ジュリアはジュリーの存在を知ることになりますが、意外な展開になりますよね。

 

黒木 そういう意味では、ジュリアが見せた「人間くささ」なのかなって。

 

──ジュリア役のメリル・ストリープがまたかわいらしいんですよね。

 

黒木 実在のジュリア・チャイルドの映像を見て研究なさったとか。旦那さんを演じた役者さん…「プラダを着た悪魔」でゲイのナイジェルを演じた…。

 

──スタンリー・トゥッチですね。

 

黒木 そう、そうでした。今回は本当に心の広い旦那さん役で、見ていて和みました。

 

──ジュリー役のエイミー・アダムスは「魔法にかけられて」の主人公ジゼル役で有名ですが…。

 

黒木 え、あのかんしゃく娘役の? わ、彼女だったんですね!

 

──はい。「ジュリー&ジュリア」では、あの何とも言えずフツーの雰囲気が、反対にすごいと思いました。

 

黒木 ピザ屋の2階に住んでいるというシチュエーションも、アメリカらしくていいんですよね。ジュリーが「狭いキッチン」と嘆く台所も、日本の住宅事情からすると、全然広くて(笑)。

【後編】へ続く(12月15日UP予定)

 

ジュリー&ジュリア(’09米)
時代を超えて“料理”でつながる2人の女性の人生
1961年に出版したフランス料理本がベストセラーとなったジュリア・チャイルドと、彼女のレシピを再現しブログにつづる現代女性ジュリー・パウエルの姿を描いたヒューマン・ドラマ。「めぐり逢えたら」の女性監督ノーラ・エフロンの遺作

監督・製作・脚本/ノーラ・エフロン
原作/ジュリー・パウエル
出演/メリル・ストリープ エイミー・アダムス
BD&DVD/ソニー・ピクチャーズ

 

<PROFILE>
くろきはる
1990年3月14日、大阪府生まれ。NODA・MAP番外編「表に出ろいっ!」(’10)で本格デビュー。「小さいおうち」(’14)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。映画待機作は「繕い裁つ人」(’15年1月31日公開)、「幕が上がる」(’15年2月28日公開)、「ソロモンの偽証 前篇・事件」(’15年3月7日公開)、「〜後篇・裁判」(’15年4月11日公開)
最新情報は公式サイトへ http://www.tokyo24.jp/artist/kuroki/

取材・文/平田真人 撮影/石川信介 スタイリスト/井伊百合子 ヘアメイク/北一騎


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