• 第七回 「小さいおうち」と二本立てで味わいたい 「つぐない」【前編】

  • 2026.01.27

 

“つくり話”が大きな“染み”となって広がっていく…人生の残酷さを感じました。

 

──現在、黒木さんも出演されている山田洋次監督の新作「小さいおうち」が公開中ですが、今回はそれと二本立てにすると味わい深いかもと思い、ジョー・ライト監督の「つぐない」を見ていただきました。

 

黒木 「小さいおうち」は中島京子さんの直木賞作品を映画化したもので、「つぐない」はイギリスのブッカー賞作家、イアン・マキューアンの「贖罪」が原作。重たい内容の映画でしたけど、どっぷり引き込まれてしまいました。ねじれた運命の糸から目が離せなくなります。

 

──最初はシアーシャ・ローナンふんするその事件の中心人物、13歳の少女ブライオニーの目線で映画はつづられていきますが、感情移入できましたか?

 

黒木 思春期真っただ中の多感な文学少女という設定ですから、好意を抱いていた男性ロビーの裏側を知って、思わず取り乱してしまった気持ちはわからないではないです。自分の姉セシーリアとの関係を目撃してしまったことが不幸の始まりであり、若さゆえの正義感が先走って、それがひとつの“うそ”になった。あの“つくり話”があんなにも大きな“染み”となって広がっていくなんて! 人生の残酷さを感じました。これがこの映画のテーマ、“実”だと思います。

 

──ロビーは、セシーリアとは幼なじみでケンブリッジ大学の同窓生。でも彼女の家の使用人の息子で、“身分の壁を越えた愛”だったんですよね。

 

黒木 図書室で逢引きをしていたセシーリアとロビーは、ブライオニーにその現場を見られてしまうじゃないですか。あのとき、もし何かうまく弁解していたら、2人の将来は変わっていたかもしれない…。

 

──そうですよね。結果、ブライオニーにとっても、ついた“うそ”は一生負い目となり、心の中に“秘密”を抱えることになる。

 

黒木 映画の展開を追いながら、彼女が“秘密”をもち続ける苦しさを想像しました。原作の「贖罪」というタイトルはキリスト教で「人々の罪をあがない、救うためにイエス・キリストが十字架にかかったこと」を指すわけで、そうするとロビーがキリスト、ユダがブライオニーの立場になるのか…なんて解釈をしてみたりもしました。

【後編】へ続く(2月5日UP予定)

 

「つぐない」(’07英・仏・米)
少女のついたうそが恋人たちの運命を狂わせる
1935年の英国。13歳の少女ブライオニーは、ある日、姉とその恋人の情事を目撃し、激しい嫌悪感から、取り返しのつかないうそをついてしまう。マキューアンのベストセラー小説「贖罪」を映画化したラブ・ストーリー。
監督/ジョー・ライト
原作/イアン・マキューアン
出演/キーラ・ナイトレイ ジェイムズ・マカボイ
BD&DVD/NBCユニバーサル・エンターテイメント

 

<PROFILE>
くろきはる
1990年3月14日、大阪府生まれ。第37回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、数々の映画賞で新人賞を受賞。NODA・MAP番外編「表に出ろいっ!」(’10)で本格デビュー。山田洋次監督「小さいおうち」が公開中。その他の待機作に、映画「銀の匙」(3月7日公開)、NHK連続テレビ小説「花子とアン」(3月31日~放送)がある。
最新情報は公式サイトへhttp://www.tokyo24.jp/artist/kuroki/

取材・文/轟夕起夫 撮影/石川信介
ヘアメイク/北一騎


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