第十八回 年の瀬にオススメの一作 「東京ゴッドファーザーズ」【前編】
- 2025.12.26
黒木華が“華”(=ハイライト)と“実”(=テーマ)を合言葉に気になる映画を語る、本誌好評連載のロング・バージョン。今月のお題は、ストレートに【クリスマス映画】。でもチョイスは意外な一本…?
今さんの作品は何回見ても、必ず毎回感動があるんです。
──黒木さんは、何歳までサンタクロースの存在を信じていました?
黒木 いつだろう…中学生の時にはもう“正体”を知っていたので、小学校の高学年くらい、ですね。クラス内で「サンタって本当はね…」という話が伝わってきた記憶があります。ただ、まだ信じていた時にサンタさんからもらった大きなイヌのぬいぐるみは東京の部屋にもってきて、今も一緒に住んでいるんですよ(笑)。
──おっ、少女な一面を垣間見た気が…。クリスマスの朝、目が覚めたら枕元に置いてありました?
黒木 はい。ちゃんと手紙を書いてお願いしたので、「本当に来てくれたんだ!」って。喜びが全身をかけめぐる感覚は、今でもよく覚えています。
──という前振りから、もうお察しかと思いますが…今月は時節柄、王道のテーマ「クリスマス映画」です。しかし、「東京ゴッドファーザーズ」とは、さすがのセレクトですねぇ!
黒木 私、今敏さんの作品が大好きなんです。「パプリカ」を入口に、「千年女優」から「パーフェクトブルー」とフィルモグラフィを遡っていったんですが、とにかく「すごい!」の一言に尽きますね。平沢進さんの音楽を聴くようになったのも、実は今さんの作品がきっかけだったりするんです。
──なるほど、P-MODELを愛聴している理由が…すなわち点と点がつながりました! して、今敏作品の魅力とは?
黒木 時間や空間を飛び越えるアニメならではの描写を、映画的に見せてくれるところでしょうか。登場人物たちにも実在感があって…「東京ゴッドファーザーズ」の主人公3人には、特にそれを感じます。オネエのハナちゃんは梅垣(義明)さんの声がピッタリで、歌う場面では思わず聴き惚れてしまいました。
──主人公のひとり、ギンちゃんを演じた江守徹さんの声もまた、いいんですよねぇ。で、物語ですが…クリスマスの夜に3人のホームレスが置き去りにされた赤ちゃんを拾うところから始まります。
黒木 現代的な社会問題に焦点を当てながらストーリーが進んでいきますが、ちゃんと登場人物の一人ひとりにスポットが当たるんですよね。しかも、全ての伏線を回収してロマンチックに幕を閉じる──「あぁ、クリスマスだ!」と思わせてくれるところが、たまらなく好きです。それと、テンポがすごくよくて。あの繋ぎ方はアニメーションならではという感じがします。実写で撮ったらどうなるのかな…と想像したこともあるんですが、ナンセンスだなという結論にいたって、やめちゃいました(笑)。
──実写版も見てみたい気がしますね。
黒木 ブルーレイの映像特典で、今さんと鴻上尚史さんのスペシャル対談が収録されているんですけど、これが興味深いんですよ。機会があれば、こちらもご覧いただくとおもしろいと思います。
──しかし、もう今さんの新作を見られないと思うと…やはり寂しいですね。
黒木 それは本当に…はい。でも、今さんの作品は何回見ても、必ず毎回感動があるんです。次に何が起こるのか覚えているんですけど、その都度、「あぁ、やっぱりおもしろいなぁ」と思うことができるんですね。それだけシナリオが練られているのだと思いますけど、絵がまたチャーミングで。しかも、絵でありながら、ちゃんとその場で生きている──息づかいを感じられるから、見ていてスッと感情移入できるという。
──アニメーション作品から、ご自身のお芝居に活かせるようなインスピレーションを感じたりすることもあるんですか?
黒木 う~ん、そこはやはり純粋に作品を楽しむ、という感覚ですね。一度、「おおかみこどもの雨と雪」で声優のお仕事をさせてもらったので、声優さんのお芝居を「すごいなぁ」と感じながら鑑賞することはありますけど…。純粋にアニメーションで好きなのは手塚治虫さんの「メトロポリス」なんですけど、演技という側面は意識せず、純粋に心が動くかどうかで気に留めるという感じです。と言いつつ、たまにアニメならではの表情をおもしろいなと思って、実際に人間がやるとどうなるんだろうって、真似してみることもありますけど(笑)。表情が豊かなので、つい真似してみたくなるんです。
──それは一度ぜひ見てみたいです(笑)。
【後編】へ続く(2015年1月13日UP予定)
| 東京ゴッドファーザーズ(’03) 3人のホームレスが聖なる夜に出会った奇跡 クリスマスの夜、3人のホームレスが捨てられた赤ちゃんを拾う。子供の親を探して東京中をさまよう彼らに、やがて思いもよらぬ〝奇跡〟が訪れる。’10年に亡くなった「千年女優」(’02)、「パプリカ」(’06)の異才、今敏による心温まる人間讃歌 監督・原作・脚本/今敏 声の出演/江守徹 梅垣義明 岡本綾 BD&DVD/ソニー・ピクチャーズ |
| <PROFILE> くろきはる 1990年3月14日、大阪府生まれ。NODA・MAP番外編「表に出ろいっ!」(’10)で本格デビュー。「小さいおうち」(’14)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。映画待機作は「繕い裁つ人」(’15年1月31日公開)、「花とアリス殺人事件」(2月20日公開)、「幕が上がる」(2月28日公開)、「ソロモンの偽証 前篇・事件」(3月7日公開)、「~後篇・裁判」(4月11日公開)、「母と暮せば」(12月12日公開)。TVドラマ「天皇の料理番」が’15年4月~TBS系にて放送予定 最新情報は公式サイトへ http://www.tokyo24.jp/artist/kuroki/ |
取材・文/平田真人 撮影/石川信介 スタイリスト/井伊百合子 ヘアメイク/北一騎




