• 若者のドロドロした私生活をのぞき見しているような感覚で一気に引き込まれました

  • 2025.06.15

 

■今月の一本
「恋の渦」

 

■見せたい相手
テラスハウスの住人

 


「恋の渦」
劇団ポツドールの主宰、三浦大輔の原作・脚本による同名舞台を、「モテキ」の大根仁監督が映画化した恋愛群像劇。イケてないオサムに女の子を紹介する目的で部屋コンをした男女9人。コンパは微妙な空気で終わったが、その夜を境に、本音とウソが入り交じったゲスでエロい恋愛模様が繰り広げられる
監督・撮影・編集/大根仁
原作・脚本/三浦大輔
出演/新倉健太 若井尚子 柴田千紘 後藤ユウミ 松澤匠
DVD&ブルーレイ/アスミック・エース

見ましたよ~、「モテキ」の大根監督の長編第2作。撮影日数たったの4日間という低予算のインディーズ映画にも関わらず、フタを開けたらロングラン・ヒットしたそうで。スゴいですよね。

 

物語としては、部屋コンで出会った男女9人の群像劇なんですが、まず、登場人物全員がどうしようもないクズ(笑)。飲み屋で隣の席の若者がチャラくてイラッとした経験ありません? そんな苦々しい感覚が、冒頭の部屋コン・シーンでずっと続く感じ。

 

大根監督は、2004年の「30minutes」(テレビ東京系)からの知り合い。「モテキ」でも思いましたが、大根さんは人間のネチョッとした部分を描くのがうまいですよね。中でも気になったキャラはオサム! 派手なグループの中で浮いているので「いいヤツなんだろうな」と思っていると、みごとに裏切られます。外ではイジラれキャラなのに、部屋の中では威張っていてね。部屋コンで紹介され、不本意ながらもイイ感じになったユウコに肉まんを買いに行かせる場面なんか、ヒドイ。自分と名前が同じだけに複雑な気持ちでした(笑)。昔、ああいう部屋に僕も住んでたし…。

 

片や女の子は、3人のアパレルショップ店員仲間それぞれのキャラ設定と配置がリアルでしたね。誰がタイプかって? ぶっちゃけ誰とも付き合えません! 中でも強烈に印象に残っているのは、トモコ。同棲中のコウジに「コウちゃんに気に入られることがぁ~、私のぉ人生最大のぉ目標だからぁ~」って言うシーンがあるんですが、まぁイタい。でも、オサムの言動も、トモコのしゃべり方も、「こういうヤツ、いる!」って笑っちゃうし、若者の私生活をのぞき見しているような感覚で一気に引き込まれました。

 

あとね、自分の周りの後輩芸人の若かりし頃ってこんな生活だろうなと妙にリアルに感じたりもして。親元から離れてひとり暮らしを始めた直後って何をしてもいいじゃないですか。夜中まで起きていても文句は言われないし、タバコも吸い放題。「恋の渦」はそういった若者ならではの生態をディープに切り取っています。それと劇中の9人は純粋な東京出身者じゃないんじゃないかなぁ。東京に出てきてバイトしながらなんとなく知り合いができて、部屋で鍋パーティをして、そこでの自分の位置取りに必死になって…。そうして本音とウソを積み重ねながらの恋愛模様が渦を巻いて、ラストはお風呂の排水溝に水が流れ落ちていくようにストンと落ちる。そのスピード感がオシャレだなと思いました。密室での会話劇は、クエンティン・タランティーノが撮った「フォー・ルームス」の日本版って感じもしましたね。それに大根さんの描くラブシーンってとにかくエロくて生々しい! きっと彼女がいないとき、いっぱい妄想してたんだろうなぁ。ってこんなこと言ったら大根さんに怒られるか(笑)。

 

人間関係を気にしながら生きている若者の薄っぺらい感じは、いい歳の大人であればあるほど俯瞰して楽しめると思います。逆に彼らと同じ世代の子が見ても、ここまでおもしろがれないかもしれない。こんなクズばかりなら日本は滅びますよ! 諸外国に負けてしまう! ただね、「恋の渦」は、単なる若者の色恋で終わらせないのがスゴい。トモコと付き合うことになる会社員の登場が絶妙に効いてるんです。つまり、それまで自分のテリトリーでフワフワしていればよかった彼らが、初めて“大人の世界”と対峙した瞬間なわけで。そこでコウジが動揺する描写を含めて、若者のリアルをうまくとらえてますよね。

 

誰に見てほしいかですが、仲間内でくっついたり離れたりする展開は、流行りの「テラスハウス」の構造にも似ています。恋愛を目的に入居してキラキラしてて「恋の渦」とは一見真逆だけど、心の奥底のドロドロした部分はどちらもいっしょかもしれない。ぜひテラスハウスの住人にも本作を見てもらいたいなぁ。最初はバカにして笑っていたのに、見終わったとたん、同居人に対して疑心暗鬼になること間違いなしです(笑)。

 

■プロフィール
1973年、埼玉県出身。’93年に日村勇紀とお笑いコンビ、バナナマンを結成。俳優の仕事も多く、「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」(’10)で映画初主演。現在、フジテレビ系「ノンストップ!」の司会を務める

 

■バナナマンinformation
ひかりTV、TVKで放送のトークバラエティ「バナナステーキ」が7月2日にDVD化。また、「バナナTV」DVD第3弾として、「~タイ・バンコク編~【完全版】」「~サイパン編~【完全版】」「~ハワイ編 Part2~【完全版】」が7月30日に同時発売!!

 

©2013シネマ☆インパクト

撮影/諸永恒夫