韓国製サスペンス・スリラー作で"強い母"を熱演したキム・ユンジンにインタビュー
母国での久々の出演作に「セブンデイズ」を選んだのは台本が素晴らしかったから

大人気米国ドラマ「LOST」に出演して、いまやハリウッド女優の感がある韓国人女優、キム・ユンジン。日本人には「シュリ」の彼女が印象深く残っているが、アメリカでの撮影が長く、ここしばらく韓国での出演がご無沙汰になっていた。そんなユンジンが、久々に母国、韓国の映画に出演した作品が「セブンデイズ」。誘拐された娘 を助けるため東奔西走する母親を、気合の入った演技で体現している。

短所も長所もあるキャラクターが魅力的

―久しぶりの母国に帰られての出演にこの作品を選んだ理由を。

キム・ユンジン(以下ユンジン)「正直なところ『LOST』はシーズンものなので、その撮影中に他の作品に出るのはとても難しいことなんです。ハワイでの撮影中にこ の作品の台本が送られてきたんですが、読んだとたん決めてしまって。読みながら胸がときめいて、のめりこんで台本を読むことができた。そのぐらい台本を気に入ってしまって、これは何 が何でも、スケジュールの調整をしてでもやらなければということで、飛びついて出演を決めて韓国で撮ることになりました」

―胸がときめいたのはどういう部分?

ユンジン「どの部分がっていうのではなく全体が素晴らしかったです。私はスリラーっていうジャンルが大好きなんですが、韓国ではスリラーはなかなか当た らないんですね。観客は難解だとか思ってしまってちょっと敬遠する傾向があった。でもこの台本を見たとき、スピーディで映画の世界に引き込まれてしまうし、とにかく面白い作品にな るっていう手ごたえがあった。韓国の女優としてこれほど深みのある作品に出られるっていうのもめったにないですし、ユ・ジオンっていうキャラクターがまた魅力的だったんです。優秀な 弁護士なんですが母親としては短所も多いそのキャラクターも魅力的で、ぜひやりたいと思いました」

―本作で(韓国アカデミー賞の)大鐘賞主演女優賞を獲られました。感想は?

ユンジン「yes!って感じ(笑)。とてもうれしかったです。賞をいただくのは初めてではなかったし、俳優に賞を授ける、賞をもらうというのに対しては、 そういうことはいいのかなとも思っていました。なぜかと言うと、演技というのはいろいろあってしかるべきで、この演技が優れてますよ、これでなら賞をあげますよというのはちょっと変 なことなのかなと。でもやっぱり受賞した時はうれしいですし、観客に支持していただけたということでもあるので、とても気分がよくて世界のすべてを手にしたように感じました」

娘のためなら地獄までという母の気持ちに共感

―本作は展開が早いジェットコースター・ムービーで、どんでん返しもあるし、練られた脚本が面白かったです。ユ・ジオンの役作りをどう考えました?

ユンジン「映画とかドラマによくありがちな弁護士像があるじゃないですか。そういうのは今回はイヤでした。そういう弁護士像にとらわれないようにやりたかった。 監督と私が一番悩んだのは、状況が状況だけに娘が誘拐されたという事実を言えない、そのときの感情表現をどうするかということでしたね。で、誘拐された事実は根底にあるんだけれど も、それを隠して他の人たちに会ったりしたときに気持ちをどこまで見せたらいいのか、ここまででいいのか、もうちょっと見せたほうがいいのか、その感情表現のさじ加減が難しかったで すね」

―演技力がないとできないですよね。

ユンジン「とんでもないです。私なんてまだまだです。でも今回は監督がうまくリードしてくださったと思います。私自身はこれくらいかなと思って表現するんですけ ど、全体から見たらどれくらいなのか自分ではやっぱりわからないですから、監督がそれを見極めて、これくらいがいいよとうまく言ってくださったと思います」

―法廷劇としての側面もある作品です。優秀な弁護士としての役作りは?

ユンジン「今回は弁護士に関する映画やドラマを自分で探していろいろ見てみたんですけど、直接弁護士の方のお話を聞くのがとても役に立ちました。監督がいろいろ 相談していた弁護士さんがいて、その方の話を私も聞くことができました。実際の弁護士から観た場合、この演技は果たしてありうるのかっていうのを見てもらわないといけないので、私自 身もいろいろ話が聞けたことが役に立ちました」

―だからか、無罪を勝ち取る展開が違和感なく見られました。ところで、このウォン・シニョン監督はカット割りをしないで一気に撮り進んでしまうと聞いています。 緊張感が途切れるヒマがないのでは。大変だったんじゃないですか?

ユンジン「最初から最後まで分けて撮る方ではないですね。で、カメラは必ずAカメラ、Bカメラを設置しておいて、必要があればもう1台使う。撮影では普通俳優は、 次はフルショット、次はバストショットと言っていただけるので準備ができるんですが、シニョン監督の場合何をどう撮ってるのかわからないんです。なので、これは大変なことになった、 常に気を抜けないとなりまして。でもそういう環境に慣れてしまうと楽になる、同じシーンを何回も取り直さなくてすみますから。クローズアップを撮りますよといわれたら、意識してない つもりでもやっぱり意識してしまうものなんですが、今回は何をどう撮ってるのか、フルなのかクローズなのかもわからなかったので、気楽に自然に演技ができたのかなと思います。俳優同 士の間では、どこでどう撮ってるかわからないからドッキリカメラみたいなものだねと話し合ってたんですが、そういう手法によって早く撮影が進んだと思います。普通の作品に比べると カット数が2倍くらい。全部で3400カットくらい今回はあったんですけど、監督は実は、AカメBカメどっちを使うか、どこでどういうふうにカット割りするかということは、全部頭の中で 決まっていたんですね。私たちとしても早く撮影ができました」

―娘の命と凶悪犯の無罪を天秤にかける主人公に、共感を得られた部分はどこですか?

ユンジン「確かにある意味非常に問題のある救出劇ですよね。娘の命を思えば犯人を釈放させるべきですが、犯人は調べれば調べるほど犯人だと確信をもってしまうので釈放したくない、でも娘のためを思えば釈放を、という葛藤をするというところに共感をもてました。そりゃ葛藤するだろうなと。最終的にはうまく解決にもって行くんですけど、法廷に 立った時に彼女は、事実はこうですとハッキリ言うんですね。あとは皆さんが判断してくださいという部分にも共感がもてました。あとひとつ一番魅力的だったのは、どんなことがあっても 娘のためならもう地獄の果てまで行ってやるという母親としての気持ちですね。私はまだ母親になったことはないですけれども、どんなことでもできるような気がしました」

―最後に、「LOST」などによって国際的な女優さんになって、米国でセクシー女優100に選ばれたりしていますが、生活や周囲、自身の仕事への考え方、母国の作品へ の見方に違いが生まれましたか?

ユンジン「世界のセクシーな女優さん100人では、実は最初の調査では98位だったんです。気分としては、どうなのかなと。100人中98位っていうのは...と戸惑いがあっ たんですが、翌年同じ調査では順位が上がって93位になってたんです。私が好きなジェニファー・アニストンより上になってたので、ちょっと気分がよかったですね。私は今とても有名なド ラマに出演させてもらってるんですが、ハリウッドで活躍している女優で東洋の女優は少ないので、運がよかったのかなと思います。いろいろ影響があったかと聞かれましたが、あまり変わ りはないですね。以前と変わりなく、1日に1時間自分に投資する時間をもとうと。1日に1時間散歩するとか水泳をするとか自分のために費やすようにしているんです。自分自身を管理す る、自分を維持していきたいなと思っています」

―これからもご活躍を期待しています。

ユンジン「(日本語で)アリガトウゴザイマス」

撮影/奥西淳二

プロフィール

キム・ユンジン

1973年ソウル出身。10歳でNYに移住、大学卒業後舞台女優に。'96年に韓国に帰国、'98年にTVシリーズ「ウエディング・ドレス」でデビュー。'99年の 「シュリ」大ヒットで人気女優に。'01年には日本映画「RUSH!」に出演。ほかに「燃ゆる月」('00)、「密愛」「イエスタデイ 沈黙の刻印」('02)、米国TV シリーズ「LOST」('04〜)など

「セブンデイズ」 

12月2日DVD発売 発売元/ソニー ピクチャーズ

8歳の娘と暮らす敏腕弁護士ユ・ジヨン。ある日何者かに娘が誘拐され、解放する条件としてすでに有罪判決を受けている犯人の無罪釈放を要求される。与えられた時間は7日間。弁護士としての良心と母としての気持ちに苦悩しながら、娘を救うための戦いが始まる。

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