ジョニー・トー監督の最新作「EXILE 絆」PRで来日
香港映画界きっての個性派、フランシス・ンを直撃!

返還寸前のポルトガル領マカオを舞台に、固い絆で結ばれた5人の男たちの熱い生きざまを描いた香港ノワール「エクザイル 絆」が12月6日に公開される。そのなかで友情に厚い男タイを演じたフランシス・ンが来日。香港映画界きっての演技派として、エキセントリックな悪人からいい人まで幅広くこなす彼が、私生活でも親友のアンソニー・ウォンのこと、ジョニー・トー監督のこと、意外なプライベートまで、ユーモアを交えてたっぷり語ってくれた。

ファンは恐いけど日本のファンは特別なんだ

ーまずは9月27日に初めてのお子さんが誕生されたとのこと。おめでとうございます!

フランシス 「ありがとう。来日中も一日に2回くらいは息子のことを思い出してるよ(笑)。まだ赤ん坊だけど、そのうち『パパ』とか呼んでくれるようになったら、離れていることをもっと寂しく感じるんだろうね」

ー今回の来日では空港やファンミーティングでたくさんの日本のファンに会われましたね。

フランシス 「普段の僕はファンに会うことを恐れているんだ。熱心に応援してくれるのはありがたいんだけど、アイドルや俳優の追っかけに貴重な時間を費やすのはどうかと思うよ(笑)。以前、香港のTV番組に出たあと、TV局の1階にファンクラブの会員が集まってるから来てくれと言われたんだ。『僕にそんなものはない!』って言ったんだけど、とにかく来て挨拶してくれというから僕は言ったよ。『みなさん人生をムダにしないで下さい。時間がもったいないです』と(笑)。中国のファンにも同じことを言ったな。でも日本のファンは特別なんだ。しょっちゅう会えるわけでも長時間会えるわけでもないからね。昨夜も僕たちが9時半に食事を終えるまで待っていてくれたファンがいて感動したよ。僕の日本のファンのなかには友だちのような感覚でつきあっている人たちも何人かいるんだ。香港に来てくれたときは一緒に食事に行ったりね。そういうファンの存在はありがたいと思ってる」

アンソニー・ウォンは親友。俳優哲学も彼から学んだ

ー今回一緒に来日したアンソニー・ウォンさんと仲がいいようですが、初めて会ったのはいつですか?

フランシス 「'92年か'93年のTVBのTVドラマだった。僕らは性格が似ているからぶつかることも多いけどあとには何のしこりも残らないし、冗談も言いあえる仲なんだ。実はそのTVドラマの撮影中にプロデューサーとアンソニーが衝突したんだけど、僕は断固アンソニーを支持した。結局アンソニーはその事件がきっかけでTVを離れて映画界に行った。それで僕も彼のあとを追って映画をやるようになったんだ。それに、もともとアンソニーはラウ・チンワンと仲良しで、僕もチンワンとは親友だったから、そのうち3人一緒にしょっちゅう遊ぶようになったんだ」

ーそれは濃いメンツですね(笑)。性格が似ている、というのはどのあたりが?

フランシス 「世の中のさまざまな固定概念や掟やシステムに対して反撥心をもっているところ。たとえばさっきのTV局の話もそうだけど、とにかく既存の考えに縛られるのがイヤなんだ。僕が渋谷を愛する理由もそこ。あの街には若者の自由な発想と表現があふれているからね。せっかくの人生なのに自宅と仕事場を行き来するだけの生活は悲しいよ。先人の意見や生き方は尊重すべきだけど、真似をしているだけではダメなんだ。それを超えていかないと。そういう意味でも今の若者たちにはもっとがんばって欲しい、というのが僕たちの共通した願いだね」

ーそのアンソニーさんはフランシスさんのことを「頭の回転が早く変わった考えの持ち主」と言っていました。「欠点がないのが最大の欠点」とも。

フランシス 「アンソニーは俳優として先輩だしいろんな影響を受けた。最も忘れられないのは役者自身と役柄の関係についての考え方。普通、役者は役柄に合わせて演じるよね。でもアンソニーは『それは逆だ。役柄を役者に合わせてもらうのが本当の役者の腕の見せどころだ』と言うんだよ!役者は役をもらうと相手のリクエストに応えてヘアスタイルや体型を変えるのが普通でしょ?でもアンソニーの考え方に共感した僕は、ある時期そういうことを一切気にせず、頭を丸坊主にしていたんだ。ところがそうしてからのほうが、逆にいろんな役が来てどんな役でも自由に演じられるようになったんだよ。『役を僕に合わせてもらえばいいんだ』という意識というか、自信というか、俳優哲学というか、そういうものはすべてアンソニーから学んだね。そんなアンソニーも、以前はもっと社会への不満をストレートに表現していたのに、最近大人しくなっちゃったのがとても残念。えらくなってお金持ちになったせいかな?(笑)」

ジョニー・トー監督と一緒に仕事をするにはコツがある

ー以前、ジョニー・トー監督にインタビューしたとき「演技は二の次。真面目にやってくれる役者が欲しいから結局同じ俳優を使うことになる」と言われたのが意外でした。

フランシス 「そんなこと言われたって、僕はジョニー・トー監督のために何でもがむしゃらにやるつもりなんか毛頭ないよ(爆笑)。今回の映画の演出は本当に即興だったんだ。シークエンスの説明さえほとんどないから演じる側としては実に苦労した。ある日、監督が3mくらいの高さからすごく狭い場所に飛び降りろと言った。僕はそんなの絶対できない、と思ったけど、僕たちくらいのベテランになるとムリして怪我するつもりはないし、監督の機嫌を損ねる気もないしね。そこで僕は『じゃあスタントマンで一回試してみましょう』と言った。案の定、誰もできやしない(笑)。そこで初めて『じゃあこんなのはどうですか?』と言って両手を壁につけながら降りる方法を提案したんだ。結果的に監督の最初の指示より数段カッコいいシーンが撮れたよ。ジョニー・トー監督との仕事は、だいたいいつもこんな感じで適当にやってるよ(笑)」

ー次またジョニー・トー監督からオファーがあったらどうしますか?

フランシス 「彼から出演依頼をもらうと、嬉しいのと『え〜また?』という気持ちが正直半々(笑)。これまでと同じメンバーだったら何も考えずにすぐにOKすると思う。でもメンバーが変わるならやっぱり少し考えるかな(笑)。アンソニーは彼の次の映画に出ることが決まってるみたいだけど、
さっきの話によると、監督は演技はヘタでも真面目にやってくれる役者がいいんでしょ?だったら僕がわざわざ出ることもないな(爆笑)。アンソニー、ガンバレ!」

「俺は男だ!」と思うときは...

ー「エクザイル 絆」は究極の男の美学を描いていますが、フランシスさんが「俺は男だ!」と感じる瞬間は?

フランシス 「それはやっぱり奥さんに生活費を渡す瞬間だね(笑)。男は家族を養わないと。僕が思うに、男を全面に出してるタイプの人間は何かをなしえることが少ない。歴史を振り返ってみても、偉大な王様は男らさしさと同時に女々しい部分を持ち合わせていたような気がするんだ。またそういう人間に限って成功するというか...マッチョな男は肉体労働で終わる運命だったのかもね(笑)」

ー今、日本ではフランシスさん主演のドラマ「恋するパイロット」が放映されています。

フランシス 「あ、あれね。あれは僕が悪役じゃない役もできるんだ、ということを世間に知らせたくて出たんだ。ただそれだけ」

取材/望月美寿 撮影/栗栖誠紀

プロフィール

フランシス・ン(呉鎮宇)

1961年12月21日生まれ。テレビ局TVB俳優養成所を卒業後、数多くのTVドラマに出演。その後映画界入りし、「キラーウルフ 白髪魔女伝」('93)や「欲望の街 古惑仔? 銅鑼湾の疾風」('95)で注目される。'99年のジョニー・トー監督作「ザ・ミッション 非情の掟」で台湾金馬奨最優秀主演男優賞を受賞多数。ほかに「インファナル・アフェアII 無間序曲」('03)「軍鶏Shamo」('07)などに出演。日本ではTVシリーズ「恋するパイロット」がBS-iで放映中。ン・ジャンユーとも呼ばれる

「EXILE 絆」

ブレイズ(アンソニー・ウォン)とファット(ラム・シュ)は、「ボスを狙撃したウー(ニック・チョン)を始末しろ」という組織の命令を受け、マカオにあるウーの家を訪ねる。そこにはウーを守るためにやって来たタイ(フランシス・ン)とキャット(ロイ・チョン)の姿があった。幼い頃からともに育ち固い絆で結ばれていた5人の男たち。再会の瞬間、激しい銃撃戦が始まる...。香港映画界の名匠ジョニー・トー監督がトー組と呼ばれるなじみの俳優と組んで撮り上げた男映画の傑作

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