「アキレスと亀」で知る求道者の悲哀
第65回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品される「アキレスと亀」を見に行った。絵を描くことにしか興味がなく、周囲の迷惑を省みず芸術に没頭する売れない画家の人生を描いた人間ドラマだ。画家の周りには家族や仲間の死など数々の悲劇が起こるが、彼は悲しむどころか死んだ家族を作品のモチーフにするなど、その悲劇すら芸術へと昇華させようとする。はたから見れば非常識な感覚であり、理解しがたい行動だろう。そこで思い出したのは浅草での下積み時代、ビートたけしが師匠にどんなことでも笑いにすることを忘れるなと叩き込まれていたという話だ。その師匠が火事で亡くなったとき、すでに有名になっていたたけしは尊敬する亡き師匠をネタにして笑いをとった。「バカだよな、もうちょっと待ったらみんなが火葬場で焼いてくれたってのに」。人によっては不謹慎なネタだが、芸の道を究めるプロとしての愛情表現なのではないか。だからこそ画家の悲哀は、きっと北野武監督が一番理解しているのだろう。それこそ、先を歩く亀に追いつけないアキレスのように、私たちがどんなに早く走っても彼らの精神にはなかなか追いつけないような気がした。 (チッペンデール)

アキレスと亀
配給/東京テアトル=オフィス北野
9月20日公開
(C)2008『アキレスと亀』製作委員会









