「クローズZEROII」の現場、
そして役者である自分をやべきょうすけに聞く!




「クローズZERO」「クローズZEROII」は
役者としての自分を大きく変えてくれた作品。
カラスたちと同じように、
今後は次のステージに飛んでいきたい


「クローズZERO」シリーズで若いモンたちの兄貴分としてメジャー・ステージに躍り出たやべきょうすけ。役者歴19年の経験と情熱を、そしてそれを若いワルメン俳優たちに伝え続けた現場の裏話を、た〜っぷり語ってくれた。

乗り越えるべき高い壁になった前作「クローズZERO」

ー「クローズZEROII」もやっとDVD&BDリリースにまでこぎ着けました。2作を振り返って、今どんな感慨をおもちですか?

やべきょうすけ(以下やべ)「前作『〜ZERO』が終わった時点では、いい作品を残せてよかったと率直に思いました。それでもいざ続編をつくるとなると、やっぱり前作を超えるものにしたくなった。スタッフ、キャストともにそんな思いが本当に強かったんですよ。ところが、全員が全員、前作で全力を出し切った自負があるから、それを超えるとなると相当な覚悟が必要になります。自分たちが愛する『〜ZERO』が、今度は自分たちが乗り越えなければならない高い壁となってしまった。しかも、原作者の高橋ヒロシさんが、ノリに任せた発言ではないでしょうけど『今度は鳳仙だ!』なんて言うもんですから、えらいことになっちゃったなと(笑)。
ですが、自分たちにとって『〜ZEROII』はハードルが高い作品ではあったけど、撮影が終わった時には、前作を超えるものができた確信はありました。見てくださった方にも、すごくよかったと大好評で迎えられ、正直、ほっとしました」

ー「クローズZERO」では第17回日本映画批評家大賞助演男優賞を受賞されるなど、役者としてのやべさんにも注目が集まりました。

やべ「これは裏話になりますが、高橋ヒロシさんは役者=やべきょうすけをずっと見続けて、ファンを公言してくださっていたんです。そんな高橋さんから『〜ZERO』映画化にあたって『やべに学ランを着させないでくれ』と要望があった。『30歳を超えて学ランはもういいだろう。次のステップに向かわせてほしい』と、本当にありがたいお言葉でした。プロデューサーの山本(又一朗)さんにもその気持ちをくんでいただき、『やべにはこんな役をやらせたい』との愛情から生まれたのが片桐拳というキャラクターで、脚本の武藤(将吾)さんには無理を言ってあて書きをしてもらいました。そういった経緯を考えると、片桐拳はやりやすい役でありながら、逆にやりにくくもありましたね。三池(崇史)監督とは10年以上のおつき合いですが、『やべなら当然やってくれるよね? もっと驚かせてくれるよね?』と無言のプレッシャーも感じましたし(笑)。
 授賞式のステージに上がる時には戸惑いとちょっとした恥ずかしさがありましたね。果たして俺は本当に芝居をしてたんだろうかって。同じく主演男優賞を受賞して一緒にいた(小栗)旬には『やべさん、芝居してましたっけ?』とすっかり見透かされてた(笑)。とはいえ『クローズZERO』のような作品に出会えることはなかなかあることではないですし、役者としての自分を大きく変えてくれた作品であることは間違いない。せっかくこういう作品にめぐり会えて評価していただいたわけですから、今後、やべきょうすけ自身も次のステージに飛ばなければという気持ちが大きくなりました」

ー片桐拳は出番は少ないながら、『〜ZEROII』でも重要な役回りで再登場しますね。

やべ「当初は『〜ZEROII』に出るつもりはなかったんです。高橋さんから鳳仙の話が出た時にまず考えたのは、鳳仙を単なる"やられ役"にはしたくない、鳳仙サイドのドラマも手を抜かずに描きたいということ。鈴蘭VS.鳳仙の図式をしっかり描くとなると、時間的にも拳の出番は必要ないのではないか。役者としてではなく、『〜ZERO』に携わった人間として山本さんにそう提言しました。それに、映画化のきっかけはやべ君だから、なんて理由で出番をつくられるなんていやですからね。そもそも『クローズ』の映画化をお願いしたのは、自分が出演したいからじゃない。原作を通じて僕が感じたことを、より多くの人たちに、また違った形で伝えられないかと思ったからなんです。
 山本さん、三池監督、武藤さんともいろいろ話し合った結果、鈴蘭と鳳仙の対立を招いた張本人、川西にやり直すきっかけを与える役回りとして拳は再登場することになります。そして、この役回りを演じることで、拳も人として成長できるのではと考えました。誰よりも命の重さを知っている拳が、自分の経験を踏まえて川西に思いを伝える。それは同時に、おのれの生き方を他人に依存してきた拳が、初めてみずからの足で一歩を踏み出すことにもなる。
 岸谷五朗さん演じる滝谷英雄が入院している病室で川西を説得するシーンは、台本ではバトル・シーンにインサートで挟み込むように書かれていたんですけど、カットを割らずに一連で撮ることになりました。三池監督に言われたのは『このシーンに関してはNGはありません。セリフを噛んでも、とにかく気持ちさえ通じていれば、不器用でも何でもいい。やべさんお得意の、涙、鼻水、よだれ、出すもの全部出し切ってもらって、やっちゃってください』と(笑)。役者として必要とされるうれしさもあいまって、いつも以上に気合いが入りましたね」

大切な作品だから現場のすべてを見届けたかった

ーご自身の撮影以外の日も現場に立ち会われたとか。どのようなスタンスで見守られたのでしょう?

やべ「47日間、毎日行ってましたね。クランクイン前の準備段階から、役者としての出番が終わった後も、学校セットの撤収作業、最後に残った実景撮り、小物撮りまで全部つき合いました(笑)。最初からそうしたいってお願いしてたんです。というのも、台本ではなかなか詰めきれていない部分があったので、現場で状況が変わることが想定されたからです。それに、高橋さんから預かった大切な作品なので、現場がどうなっているかを逐一報告したかっですし、少なからず自分がきっかけで始まった以上、最後まで見届けるのは当然との思いもありました。
 誰よりも早く現場に入って、役者みんなの顔を見て、最後に『お疲れさま』とスタッフにあいさつして帰る毎日。所属事務所には申し訳ないけど、ほかの仕事は一切入れないでとお願いしてました(笑)。」

ー現場では「〜ZERO」からのキャストと新たに加わった鳳仙キャストとの間に、ちょっとした対立があったと聞きましたが。

やべ「これは実を言うと、製作サイドにちょっと問題があったんですよ。『〜ZERO』のキャストはチームワークがすでにできあがっているので、新しい役者はなかなか入りにくい環境です。だったら、無理に中に入ろうとするより、緊張感をうまく利用しようともくろんだ。『お前ら、あいさつもしなくていい。ガッチガチで向かっていけ』と製作サイドがあおってしまった。しかもそれを、直接ではなく事務所を通して通達したわけです。そんな思惑とはまた別に、俺は俺で鈴蘭の連中に対して『今回は鳳仙をよりよいものにしなければ、対立の図式が成り立たない。彼らにはわからないこともたくさんある。だから何かあった場合、俺は鳳仙の側につくよ』と事前に宣言していました。
 鈴蘭のメンバーは『自分たちも通ってきた道だから、ウェルカムの状態で迎え入れようぜ』と話し合っていたのに、いざふたを開けてみたら首をかしげている。『こっちが役名と名前を言って、よろしくお願いしますってあいさつしてるのに、あいさつが返ってこない。これってどういうことですか? 何なんですか、あいつら』と相談に来た。そのことを鳳仙メンバーに問いただすと『ちゃんとあいさつしてますよ』という。みんな事務所からの指示だと言いたくない。反対に鈴蘭は『向こうがその気ならやってやる』となってしまった。
 それからすぐ、筒本役の上地雄輔と漆原役の綾野剛の立ち回りのシーンの撮影があった。漆原の立ち回りは特別レベルの高さが要求されるから、2人はずっと練習を重ねてきた。でも本番中、まったくの不可抗力だったんだけど、2人のボルテージが上がって、雄輔のテンプルに綾野のひざ蹴りが当たってしまったんです。雄輔はその瞬間意識が飛んで、地面についた左手を脱臼し、後頭部を強打です。幸い大事には至らず、撮影への影響も2人の間にわだかまりもなかったんだけど、その噂がすぐに伝わるわけです。立ち回りなんて信頼関係がなかったらできない。結局、あいつらがコミュニケーションを取ろうとしないから、起こるべくして起こった事故だ、と鈴蘭側が色めき立ってしまった。」

ー本編と同様に一触即発の状態。そこで、やべさんが両者の仲介役を買って出たと?

やべ「さすがに何とかしないとまずいですから、山本さん、三池監督とも相談して、撮休日に全員集めて酒を飲むことにしました。最初はにらみ合ってピリピリした雰囲気だったけど『これから長い時間つき合っていくんだから、全部ぶっちゃけろ』と。『お前、何様だ』『なんだこの野郎』から始まって、30分後にはみんな入り乱れて『俺たちはお前らと一緒にやりたいんだよ』『おっしゃ、行こうぜ』と肩を組んで酒を酌み交わしてた(笑)。男の子ってやっぱ素敵だなと思いましたね。本音でぶつかることってそんなにないじゃないですか。雄輔のケガは、いい意味でその後を加速させるきっかけになってくれました」

誰もが"目一杯"だったバトル・シーンの撮影

ー作品の大きな見せ場であるバトル・シーンは、前作以上のクオリティに仕上がっていましたね。

やべ「『〜ZEROII』をやることになって、一番初めに浮かんだのが伊崎VS.芹沢。原作はもちろんのこと、『〜ZERO』は脇のキャラクターが際立っているのが強みです。ただつくり手サイドには、前作では伊崎役の(高岡)蒼甫に耐えてもらったという意識がずっとあった。これは芹沢の(山田)孝之もしかりです。2人の戦いはぜひともフィーチャーしたかったのに、削らざるを得なかった。伊崎と芹沢はお互いの存在を認め合ってるけど、基本的には自分から仕掛けるタイプじゃない。でも、そこを避けて通ると『〜ZERO』っぽくないし、こういう戦いがあってこその『〜ZERO』なんですよ。蒼甫と孝之には台本ができる前から絶対にやるよと言ってありました。結果、2人のテンションが、特に蒼甫の気合いの入り方は半端じゃなかったですね。」

ー鈴蘭と鳳仙の最終決戦は、平面的な校庭と立体的な校舎、群衆バトルとタイマンなど、両校の制服の対比も含めてコントラストが鮮やかです。

やべ「校庭でぶつかり合うシーンは─、現場では"合戦"と呼んでいましたが、前作の経験があったのでわりとやりやすかった。大変だったのは、校舎から屋上へと至る"城攻め"です。校舎の中はライトがあるからめちゃくちゃ暑くて、とにかく集中力が続かない。狭い上に椅子やら机やらが雑然と置かれていて、特に鳳仙のスキンヘッド軍団がいる時はごちゃごちゃになって、つねに危険と隣り合わせの状況。役者はケガをしないためにも立ち回りの段取りを確認したいから、自分の動きがどうなっているかをモニターをチェックしたがる。その気持ちもわかるので、ある程度は許してたんですけど、結局それで時間をくうようになってしまった。スタッフはスタンバイして待っているのに、役者が進行の邪魔をしている。これはいかんと思い、一度役者を集めて「もう見なくていい」と怒ったことがありました。
 屋上での源治と鳴海のタイマンでは、旬と金子(ノブアキ)のテンションが異様に高かったですね。実はこのシーン、合戦、城攻めの前に3日かけて撮ったんだけど、2人はこれが最終決戦になることがわかっている。だから、ほかのメンバーに見せつけるためにも自然に力が入ったんじゃないかな。三池監督は決着をどうつけるか決めてなくて、本人たちにとにかくやらせて、3日目の最後にもう立てないとなったらそこで決着ということになった。本人たちもどこで終わるかわからないから、目一杯やるしかない。役者は過酷な状況になればなるほどテンションが上がったり燃えたりする動物なので、脇で見ていても、2人はとことん気持ちよさそうでした」

ー本作のファン、またはこれから見る人にメッセージをお願いします。

やべ「『〜ZEROII』は前作以上にみんなでつくりあげたという意識が強い作品。鈴蘭の役者たちはみんな撮影に入る前に準備をして、自分が演じたキャラクターのその後を台本に書かれていないところまできっちりつくりあげていた。スタッフも含め、誰一人欠けることなく集まったことも大きい。このメンバーじゃなかったら、短い期間内で撮ることは不可能だったでしょう。  かたや新しく入ってきた鳳仙のキャストは、心の底から前作が好きで集まってくれた人たちばかり。『〜ZERO』はよかったけど『〜ZEROII』はダメなんて言われないために、目一杯やるんだという気持ちが強かった。最初は行き違いもあったけど、彼らの思いは見てくれた方々にもきっと伝わったと思います。
『〜ZERO』も『〜ZEROII』も、非常にいい形で皆さんに見てもらえました。ただ中には、外見のかっこよさだけに目が行って勘違いしてしまう子もいるわけです。でもやっぱり、外見のかっこよさだけじゃない本質的な部分もぜひ見てほしい。DVD&BDは時間の許す限り何度も見られるので、いろいろな視点に立ってもらえたら、深いところもわかってもらえるかなと、密かに楽しみにしているんですよ」

※高橋ヒロシさんの「高」は正しくは旧字体です。 環境により表示できないため、「高」を代用文字としています。

取材・文/佐々木優 撮影/金刺文三夫

プロフィール

やべきょうすけ

1973年大阪生まれ、千葉県育ち。出演作多数。主なものにTVドラマ「味いちもんめ」('95)、「特命係長・只野仁」('03〜)、「ドラゴン桜」('05)、「佐々木夫妻の仁義なき戦い」('08)など。映画は「キッズ・リターン」('96)、「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」('97)、「サラリーマン金太郎」('99)、「TAKESHIS'」('05)、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」('07)など。オリジナル・ビデオ作品は「喧嘩の花道」シリーズ('96〜'06)、「天牌」シリーズ('01〜'02)など多数。最新作は映画「TAJOMARU」が公開中

「クローズZEROII」

10月2日DVD・ブルーレイTBSより発売
前作「クローズZERO」を超える興行収入30億円を記録した、新世代ヤンキー・アクションの続編。小栗旬、山田孝之、高岡蒼甫らに加え、金子ノブアキ、三浦春馬らが出演。2年前に鳳仙学園トップを刺した鈴蘭高校トップだったOBが少年院を出所。復讐の機会をうかがっていた鳳仙と鈴蘭との抗争が再燃する

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