
沖縄のフリムン(方言で『おバカさん』のこと)達の、バカバカしくも暖かーい友情と家族愛と恋を綴る「南の島のフリムン」で長編映画初監督を果たしたゴリ監督に直撃。今だから明かせる、衝撃的(?)製作秘話などなどじっくり語ってくれた。映画制作に携わった日々はゴリ監督にとって、忘れえぬ「宝物」になったようだ。

ーそもそも監督を引き受けたいきさつは?
ゴリ「去年の僕の誕生日に会社に呼ばれまして、で、長編映画撮らないか、と突然言われたんです。そんな、ねえ。15分、30分のショートムービーは撮らせてもらった経験がありましたけれど、そんな浅い経験で長編映画なんて、もちろん無理じゃないですか。でもそのとき、口が『やらせてください』と言っちゃっていたんですよ。ある意味恐いもの知らずなんでしょう。僕のなかの根拠のない自信が出ちゃったというか。経験が浅くても、現場に入りゃなんとかできちゃうんじゃないか、そういう感じで受けてしまったんです」
ー「沖縄」というテーマは最初から決まっていたんですか?
ゴリ「昨年『沖縄国際映画祭』というのを吉本興業が主催をするということになり、『沖縄を舞台にした映画を撮らないか』というオファーをいただいたんです。もともと僕も、沖縄で撮れたらそりゃ、最高だと思っていたので。最高のロケーションだし、魅力的な人々ばっかりだし、食や町並みや文化も本土とは変わっているし、映画の題材にはもってこい。なので『え?いいんですか?そんな2個も3個も僕にオイシいプレゼントをくれるんですか?』と。でも、それからがタイヘン! すぐに脚本作りに入らなきゃいけないということになったんです。1ヵ月で本を書き上げないと、キャスティングやロケハン、すべてがもう間に合わないわけです。監督補でついていただいた杉山さんと共同で脚本作りをはじめ、お互いに意見を出し合って書き、書いては直し、書いては直し...と延々と。その1ヶ月間、ほぼ会社の会議室に住んでいましたね、仕事以外は出なかった」
ー事務所で脚本を書かれていたんですか?
ゴリ「はい。家にも帰らず。夏場だったので上半身ハダカで。それでも考えていると頭まで熱くなってきて、そのうち頭からその熱が体に下がってくるんです。ホント冗談じゃなく、熱くてたまらずズボンも脱いでずっとパンツ1丁でうろちょろうろちょろしていて。『なんかいいアイデアないかなー。いいアイデアないかなー』って。浮かんだらガーッて書いて。また流れをみて『あ、ここちょっと違和感あるな』----というのを1ヵ月です。だから会社の人が間違って会議室を開けたりしたら、パンツ1丁の僕がいて、もう1人杉山さんという男の人がいるから・・・。2人はこの密室で何をしようとしていたのかな、という目で見てた。」
ーそれはちょっとドラマチックですね。
ゴリ「ヘンに気をつかって、みんな『あ(ヤバイ)、すみません』って言って飛び出して行くんです。気まずい顔して。たぶんまあそっち?と思われていたのかもしれない(笑)」

ー「沖縄国際映画祭」で上映し、ご家族や友人の方がご覧になったと思いますが、どういう反応でしたか?
ゴリ「とにかくもう、上映が終わったあと拍手が止まなかったんですよ。作品は自分が苦しんで出産したわが子なんで、その気持ちをどうしても伝えたくて、客席から舞台に上がったんです。で、みなさんにお礼をしたかったわけですよ、『ありがとうございました。見ていただいて』と。そしたら会場から(指をさし)ひとり、ふたりって立ち出すんですよ。スタンディングオベーションですよ。3人、4人...? ん? そのあと4人以上、立たないんですよ。4人で止まるんですよ。あれ?と思って会場を見てみたら、うちの家族だけでした。うちのオヤジとうちの嫁とうちの子供が立っていた(笑)。うちのオヤジは若いときに映画監督を目指していた男だったので、その思いを息子がついでくれた、成し遂げてくれたってことで感極まっていましたね。そして、『次はお前に戦争映画を期待している』と。コメディ撮った僕に急にそんなこと、と言ったんですけどね。うちの嫁も、僕が家の中で悩んだり苦しんだりしているのを見てきていたので、こういう風な感じで流れをもっていこうかと思うけど、どう思う? と嫁の一般的な意見も聞いたりしていたので、会話のなかで生まれたものが、実際映画で具体化していることが嫁としては不思議だったみたいですね。作品が出来上がっていくというクリエイティブな喜びというのをいっしょに味わっていましたね」

ー「−フリムン」は友情物語であり恋愛物語であり、一方で、空手の修業を積み強くなっていくヒーローの物語でもある。そういうストーリーの骨子はどの辺りから生まれたんでしょう?
ゴリ「まず主題が『沖縄』でしたから、沖縄独特のものは何だろう? って考えたんですね。たとえば養豚場、琉球空手、サトウキビ畑、そしてアメリカ軍の基地がある----。やっぱりそういう本土にはないモノを使いたかった。じゃあ、そこから何が生まれるのか、というのを考えた。軍がある、米兵がいる、戦うなら琉球空手、だったら空手の達人がいた方がいい。修業の場はどこがいいか?広大なサトウキビ畑がやっぱりいいかなってところから、沖縄のモノをまずはピックアップして、そこから物語を作っていきました」

ーだからあんなに自然に沖縄の風景が織り込まれているんですね。 女性はとにかく強い、家族の食事のシーンが多いという印象をもったんですけど、あのあたりはゴリさんの原体験でしょうか?
ゴリ「僕は、もともと沖縄という社会は女性中心で動いていると思っていたんです。男は昼から酒を飲む、子育ても仕事も女がやるっていう社会。女が強くなかったら沖縄って島はなかった。だからみんな嫁に頭が上がらないんです。でもね、男は男でいい緩和剤になるんですよ。サンシンで常に歌を歌い苦しんでいる人の心を慰めるっていう風に。それはもう戦前戦後ずーっと変わらない。あと踊りにあふれた島ですから。そういうことではお父さん役の照屋(政雄)さんは実際にサンシンを弾かれる人ですし、まさに飲んで遊んで生きてきた、そのままの人生を演じていただいた。あと食事シーン。外でみんなで食べたほうが気持ちいい、南国独特の開放感ある食事シーンを見てもらって、『うらやましい』と思ってほしかったんですよ。みんなでひとつのテーブルを囲んで手を出しあって。そういう食事のシーンを描きたかった。」

ー作品の中のお笑いのバランスや「間」について、実はご苦労が多かったのではないですか?
ゴリ「もう、押し付けましたね、笑いの『間』だけは役者さんに。申し訳ないですけど。僕の『間』じゃなかったら何回でも止めて、『このタイミングでお願いします』とお願いしました。やっぱり芸人が撮りますから、お笑いの部分イコール"ゴリのお笑いセンス"と見られる。だからこそ、プライドをかけて演出しましたね。お笑いは、お客さんとの勝負です。初めて上映されたときは後からひやひやしながら見ていたんですけど、最初のつかみのところでお客さんがどっと笑った瞬間に『勝った!』と思いました。」
ー共演者の方とのエピソードを教えてください
ゴリ「空手の先生役の平良とみさんが、僕の、まあ、大事な部分を、男のシンボル的なものをわしづかみするシーンがあるんです。僕がつかまれて苦しむ演技をするので、中途半端につかんでもらうと迫力がないから、『本気で握ってください』とお願いをしたんです。大女優に『握ってくれ』って。そうしたら『心配だ』って言うんですよ。割れたりとかそういう心配をされてるのかなあ、と思ったんですが、でも80歳過ぎているおばあちゃんの握力ですよ。『大丈夫だよ、壊れはしないよ』と言ったら、そっちの心配じゃなくて。『おばぁが握った瞬間に男性として反応するのが心配だ』と」
ー平良さんが?本当ですか?
ゴリ「そう。まさかおばぁその心配していると思わなかったんで。『大丈夫だよ。おばぁに握られても反応はしないよ』と言ったけど、おばぁはおばぁで『わからないよ。あなたはおばぁとして見ているけど、私は女でいるから、ずっと』って。『反応させる自信がある』とか、わけの分からないことを言って(笑)。つい先日も沖縄で平良さんとお会いして、その話をしたら『分からないよー』ってまだ言ってました」

ー長い長い修業のシーン、どのように撮影されたんですか?
ゴリ「海に潜ったり、炎天下のサトウキビ畑のシーンも全部やりました。水中のシーンは、あれは12月で沖縄がとても寒い日だったんです。スタッフがみなベンチコートを着ないといられないくらいの寒さで。そのときに僕はパンツ1丁になり海に飛び込んで。1時間半、海の中につかりっぱなし。でも人間って気合でなんとかなるもんだ、と思ったんですよ。風邪ひかなかったですね。僕が途中で倒れたらこの映画はどうなる? と考えたら風邪もひけない。撮影日数がまたね、16日間しかもらえなかたんですよ。予備日が1日もない。半日でも休めば映画がつながらないですから。とにかく、ただもう、がむしゃらの日々でした。
『フリムン』の家族はけっして金持ちではないです。でもなんかね、へんにお金を持っている人より幸せに生きている。いま世の中が暗くて、本当にみんなが疲れているから。こんな楽しくのんびり生きている人もいるんだよ、こういう生活もあるんだよ、とこの映画を見た人が明るく元気になってもらえれば。僕としてはそれがいちばんうれしいですね」
1972年沖縄県生まれ。川田広樹と"ガレッジセール"結成し、TVバラエティ番組で大活躍。「ワンナイR&R」のキャラ"ゴリエ"が大ブレイク。映画監督作に短編「刑事ボギー」('06)、「ボギー☆ザ・ヒーロー」('07)がある。俳優としてはドラマ「ちゅらさん」(NHK総合)、「鬼嫁日記」(フジテレビ系)、映画「うた魂♪」('08)、「GOEMON」('09)に出演。
8月29日公開 配給 角川映画
沖縄の青空の下で、隣家の暖かい家族や友人たちと、日々バカなことばっかりして楽しく生きている青年・栄昇(ゴリ)。そんな彼が行きつけのポールバーで、新人ダンサー、オレンジ(レイラ)に一目ぼれする。オレンジを巡り、超マッチョで腕っ節の強い米兵(ボビー・オロゴン)と1対1の決闘をすることになってしまった栄昇は、沖縄空手の伝説的達人、金城(平良とみ)のもとで猛特訓をはじめる。