"死のゲーム"再び!
「ソウ5」監督デビッド・ハックル監督来日インタビュー

 観客の神経をすり減らす展開と、正視できないほどの残虐性に満ちた"地獄のトラップ"を次々と仕掛けて、ド肝を抜いてきたソリッド・シチュエーション・スリラー「ソウ」シリーズ。'04年の第1作以来世界中で大ヒットし、とどまることを知らぬ勢いで果敢にも毎年新しい続編を製作、人気を持続させてきた。常に観客の期待を上回り、これだけ次回作が待ち遠しい映画シリーズも珍しい。
 11月28日から公開される第5弾は、シリーズ史上最凶のトラップを仕掛けつつ、ついにジグソウ(トビン・ベル)の後継者が明らかになる衝撃作である。
 監督には、第2作から奇抜な残虐トラップを考案してきたプロダクション・デザイナーのデビッド・ハックルを大抜擢。トラップを用いた残虐場面をクリエイトしてきた鬼才が、自分自身のキャリア、トラップに対するこだわり方、そして「ソウ5」の魅力を大いに語ってくれた!

恐怖のトラップには、外観から放たれる異常な感覚や雰囲気みたいなものが重要なんだ

ーまず「ソウ2」に参加するきっかけから話してもらえますか。それと「ソウ」('04/シリーズ第1作)にどんな印象を抱いていましたか?

デビッド・ハックル(以下デビッド) 「『ソウ』シリーズのプロデューサーのグレッグ・ホフマンといっしょに、ジェイミー・フォックス主演の映画「クリップス」('04/日本劇場未公開)の仕事を終えて、ホフマンの勧めで、同じく『ソウ』シリーズのプロデューサーのダニエル・ジェイソン・ヘフナーに会って『ソウ2』への参加が決まったんだ。
 すでに第1作は見ていて、久々にホラー映画に魅力を感じた。ただ驚かせたりゴア(残酷)描写だけを売りにした単純なホラーではなく、考えさせるための知的要素を感じさせる伝説的な作品だったからね。しっかりしたストーリーがあってゴア描写がある。だから第2作のプロダクション・デザイナーを務めることが決定したときは大喜びしたよ」

ー「ソウ2」の美術を担当することになって、プロデューサーや監督から求められたものとは何ですか?

デビッド 「『ソウ2』の監督ダーレン・リン・バウズマンはすでに脚本の初校を執筆していて、いくつかのトラップのアイデアをもっていた。監督がよく言っていたのは、恐怖のトラップには外観から放たれる異常な感覚や雰囲気みたいなものが重要だということ。僕も自分のアイデアをもっていたから監督と話し合って、その結果、僕がトラップのスケッチを起こして自分のアイデアが作品に反映されていったのは、第2稿からなんだ」

ーストーリーとトラップの仕組みはとても密接な関係にあると思います。トラップはどのようにつくり上げていきましたか?

デビッド 「トラップと脚本はいっしょに仕上げていくような形で進めていったんだ。それにトラップはキャラクターに合致させたものでなくてはならない。例えば第2作でヘロイン中毒のアマンダ(ショウニー・スミス)が落ちるトラップが注射器の針の山。実は僕は針恐怖症だから、お気に入りのトラップのひとつがコレなんだよ。だから、まずテーマがあって、トラップができ上がる感じなんだ。
 トラップは映画空間における彫刻といった感じ。トラップの大切な要素は、観客が見た瞬間に邪悪なことが起きるのを予感させつつ、その外観からして観客の感覚に何かを訴えるものでなくてはならないし、どんな仕組みなのかを理解させなくてはダメなんだ。ほかにトラップをつくるうえでの自分なりのルールは、まず1人か2人で実際にトラップをつくることが可能なものを考えること。そして、もともとある素材を使い、コンピュータ・システムではなく、アナログな仕掛けにすることさ」

ー今まで手掛けてきたトラップで、ほかに好きなトラップはありますか?

デビッド 「トラップが好きかどうかということは、満足な形で表現できたかどうかということでもあるんだ。もちろん第5作にも好きなトラップはあるけれど、あえて言えば、第2作で手を差し込むと血が流れ出す"ハンド・トラップ"、第3作の天使の羽のように見えるエレガントなトラップも好きだね」

最初は「ソウ4」が、僕の映画監督デビュー作になる予定だったんだよ

ーデザインに興味を覚えるきっかけはなんでしたか。また残酷なトラップを創造する起源はどこにあったと思いますか?

デビッド 「僕は子供のころ、建築家になりたかった夢をもちつつ、映画づくりにも興味があったんだ。僕はウォータールー大学におよそ3年間通ったけど、途中で資金が尽きてしまって、トロントに戻ってきたんだ。その1カ月前から友人の映画製作会社で仕事をしていて、それ以来、映像関係の仕事を20数年間続けていることになるね。
 一方で、僕は小さなころから父親の工作工房を眺めていたこともあって、少年時代から両親のラジオや自転車なんかをどんどん分解しては別の形に組み立てるのが好きだった。機械いじりは子供のころからの習慣なんだ。それが僕のデザイナーとしての側面を形成し、自分の工房をもつまでになったと思う。機械いじりはトラップを創造するうえで役立ったかもしれないよ(笑)」

ーそして今回のシリーズ第5作で映画監督デビューを飾るわけですが、どんな経緯でしたか?

デビッド 「映画監督はずっと以前からやりたいと思っていたんだけど、カナダで6年間TVCMやミュージック・クリップの監督、アート・ディレクターの仕事をしていても、なかなか長編映画の監督に結びつくことなんてないんだね。妻に相談したら"やりたいことをやったらいいんじゃないの"と言ってくれた。そこで、映画のプロダクション・デザイナーの仕事に戻って映画業界でのキャリアを積んで『ソウ』シリーズに参加した。最初は『ソウ4』が映画監督デビュー作になる予定だったんだ。
『ソウ』のスタッフは仲間意識が高くて、監督は気心知れた仲間から選ぶ。だけど第4作の監督オファーを受けた1時間後、妻ががんであることが判明してね。それから数カ月間悩んだ結果、家族のことを考えて今回監督はキャンセルしたほうがいいと判断した。でも、プロデューサーが"前回と同じくプロダクション・デザイナーと第2班監督としてかかわったら?"と言ってくれたんだ。だから『ソウ4』に参加しつつも1年間家族のそばにいることができたし、妻も回復することができた。そうして、僕にとって『ソウ5』にパーフェクトな状態で臨むことができたんだよ」

ーそれはほんとによかったですね。「ソウ4」と「ソウ5」は直接つながっています。第4作の製作段階で第5作のストーリー・ラインはある程度決めてあったんですか?

デビッド 「すべてのストーリーではないけど、部分的には考えてあるんだ。公開の前年から製作が始まるわけだけど、毎年製作が始まるたびに、セット・デコレーターやプロップ係など、それぞれの担当者が自分のアイデアをすべり込ませようとして、それが発展するものもあれば、そうでないものもある。そして完成した映画を見た観客の反応、例えばネットやブログでの書き込み等をマメにチェックし、次に作る続編の参考にするんだ。ファンが何を求めているのかを分析し、新たな要素を加えたり、続編につなげるためのヒントを残したり、謎を少し明らかにしたりしてね。と同時にファンが求めていることに対し、逆のことをする場合もある。結果いい意味での期待をそぎ、観客にサプライズを与えることができるからね」

新しいプロダクション・デザイナーとはかなり激しく口論した。きっと彼は、僕を殺したいと思ったはずさ(笑)

ー「ソウ5」では監督に専任しているので、プロダクション・デザイナーを新たに参加させていますね。でも正直な気持ち、ご自分でやりたかったのでは?

デビッド 「第2作から担当してきたので、プロダクション・デザイナーの役割をほかの人に当てることは正直つらかったけど、新たにプロダクション・デザイナーとして、優秀なトニー・イアンニはとてもよくやってくれたと思う。信頼関係は築けたと思うけど、僕もプロダクション・デザイナーのバックグラウンドをもっているから、逆にトニーは大変だっただろうね。僕は自分が見たいものを映像にしたいから、厳しく言ったこともあったよ。実は、トニーとはかなり激しく口論してね。きっと彼は、僕を殺したいと思ったはずさ(笑)。でも、やりあっただけの成果が出ていると思うんだ」

ー「ソウ5」では過去のトラップと異なり、ホラー映画に対するオマージュを込めているような印象を受けました。冒頭の大きなギロチンは、ロジャー・コーマンの「恐怖の振子」('61)をほうふつとさせ、終盤のトラップとして出てくる透明の棺のようなケースはまるでドラキュラ映画のイメージですね。そのあたりの真意を聞かせてください。

デビッド 「そうだね。『吸血鬼ノスフェラトゥ』('22/日本劇場未公開)とか、昔のホラー映画が大好きなんだ。確かにオマージュとしての要素はあるけど、命は助からずに最後までいってしまうところが、今までにないおもしろさだと思う。例えば、両側の壁が迫ってくる仕掛けは『スター・ウォーズ』('77/『〜エピソードIV 新たなる希望』)にもあったけど、この映画では(実際に)つぶされちゃうんだからね。それと、後継者はジグソウと違うし、後継者なりの流儀を、違う雰囲気で見せたかったところでもあるんだよ」

ージグソウの妻ジル(ベッツィ・ラッセル)が、ジグソウの遺品が入った木箱を受け取りますが、その中身に入っているものは、すでに考えているんですか?

デビッド 「それは次回作の中で明らかになるだろうけど、中身の内容をしゃべってしまったら、あなたを殺さなくちゃいけない(笑)」

ー監督として、「ソウ」シリーズをどうとらえていますか?

デビッド 「それは難しい質問だね。『ソウ』シリーズは考える観客のための作品で、観客が心理的に恐怖のゲームとどうかかわってくれるのか、あるいは我々が観客の心をどう引き込んでいくのか、そんな関係性を形成できるすばらしさがあると思う。最近のホラー映画の問題は、ほんとに底辺のところまで落としすぎてしまって、逆にバカらしくなってしまったところがある。だからホラーであっても誠実につくる必要があるんだ。観客は利口でそれを見抜く眼をもっているから。だから、観客を映画に集中させるために複雑な構成にしたり、新しい謎をちりばめたりしてね」

ー前4作に比べて、今回の第5作が"勝っている"と思うところをぜひアピールしてください。

デビッド 「"勝っている"と思うところはドラマ部分。トラップの残酷な恐怖場面も見どころだけど、ジグソウとその後継者と思われる人物が対面する静かな場面がいい感じなんだ。ホラー映画は、(観客にとって)安全な形で、人間のダーク・サイドを知ることができるジャンルだよ。そのダーク・サイドにおける感情の流れをドラマとして表現したつもり。作品自体が、ジグソウから後継者へと感情が移行していく作品でもあるんだ。ぜひ、楽しみにしてほしいね」

取材・文/鷲巣義明

プロフィール

デビッド・ハックル

1963年2月7日、カナダのオンタリオ州ウッドストック生まれ。アメリカとカナダでアート・ディレクター、プロダクション・デザイナー、CMディレクターとしてのキャリアを積む。'97年からSF-TVシリーズ「LEXX」(原題)に参加し、2000年のカナダのジェミニ賞美術賞候補になった。「ソウ」シリーズでは「ソウ2」('05)でプロダクション・デザイナーとして初参加。「ソウ3」('06)と「ソウ4」('07)ではプロダクション・デザイナーと第2班監督を兼任した。
ほかにアート・ディレクターやプロダクション・デザイナーとして参加した作品には、TV映画「サティスファクション」('01)、TVミニ・シリーズ「ザ・グリッド」('04)など。ジム・カビーゼル主演の「OUTLANDER」('08/原題)にもプロダクション・デザイナーとして参加

「ソウ5」

11月28日公開 アスミック・エース配給

FBI捜査官のストラム(スコット・パターソン)は、ジグソウのトラップから唯一生還したホフマン刑事(コスタス・マンディラー)こそジグソウの後継者なのではと推理した。彼は上司エリクソン(マーク・ロルストン)に休養を命じられるが、それを無視してホフマンの周囲を調査。やがて意外な事実が判明する。
一方、とある密室では5人の男女が首輪のついたワイヤーでつながれ、その先には5つの大きな刃がセットされていた。助かる道は、5人が"今までとは違う生き方"を選ぶこと。これが亡きジグソウの後継者が仕掛けた"新たな死のゲーム"の始まりだった。 シリーズ最凶のトラップや時間軸を交錯させて展開するミステリアスなドラマによって、観客の心を大いに揺さぶり、ついにジグソウの真の後継者が明らかになる!

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