
下町育ちの少年とお嬢様学校に通う少女との間に芽生えた純粋な愛、若すぎる妊娠を描いた「早熟 青い蕾」。ストーリーだけ聞くとよくある青春もののようだが、初々しいふたりのまっすぐな感情、親たちの子を思う気持ちなどが丁寧に綴られた味わい深い作品に仕上がっている。監督は「つきせぬ想い」「夢翔る人 色情男女」などで知られ、最近ではジャッキー・チェン主演の「新宿物語」の完成が待たれるイー・トンシン。アンソニー・ウォン、エリック・ツァン、テレサ・モウ(本作で香港電影金像奨最優秀助演女優賞受賞)ら助演陣の名演も話題を呼んだ。今回はこの映画で初主演を飾ったジェイシー・チャンにインタビュー。映画の裏話、お父さんのジャッキー・チェンとのエピソードなどを愛嬌たっぷりの笑顔で語ってくれた。
ー「早熟 青い蕾」に出ることになったそもそものきっかけは?
ジェイシー 「それがまったくの偶然なんだ。ある部屋のドアを間違えて開けたらなかにイー・トンシン監督と女優さんがいて。あわてた僕は『あ、部屋を間違えちゃった、ごめんなさい』と言ってその場を離れたんだけど、そのとき監督が『そういえばジェイシーがいるじゃないか、今度の映画にぴったりだ』と思ってくれたんだって」

ー気が優しくておっとりした主人公が素のジェイシーそのままなので、はじめからジェイシーの初主演作として企画されたのかと思ってました
ジェイシー 「それは違うよ。イー・トンシン監督は中国語で『早熟』、英語では『2young』という映画のタイトルどおり、いま社会現象になっている若すぎる父親、母親についての映画を作りたかったんだ。『早熟 青い蕾』は香港では教育映画として学校などいろんなところで上映されてるんだよ」
ーエリック・ツァン、アンソニー・ウォンら先輩たちとの共演はいかがでしたか?
ジェイシー 「僕はこれが2本目の映画でフィオナにとっても女優デビュー作だったからすごく緊張したけど、たくさんのことを学んだよ。例えばエリック・ツァンはたくさんの映画を撮っているからリハーサルしない。なのにとても自然な演技ができるんだ。台本で3〜4ページ分のセリフも全部頭に入っていてほとんどワンテイクでOK。ビックリしたよ。最後の法廷シーンには検事役でチン・カーロもいたんだけど、彼はセリフを全然覚えてなくて、15テイクから20テイクも重ねたんだ(笑)。僕はそこに立っているだけのシーンだったんだけど、両極端なふたりの間に挟まれて、正直いたたまれなかった(笑)」
ー「早熟 青い蕾」では主題歌も担当しましたね。
ジェイシー 「映画を見た人は必ず曲を聴くわけだから、映画のテーマを踏まえつつシンプルな歌詞にしたんだ。あまり考えすぎないように、直接『I LOVE YOU』とか言わないで『ひとりぼっちは嫌い、誰かと一緒にいたい』という若者の気持ちを歌ったんだよ」
ージェイシーは18歳のとき、お父さんに彼女との仲を引き裂かれた経験があるとか。
ジェイシー 「僕がアメリカで勉強中だったときカナダに遊びに行ってある女の子と出逢ったんだ。LAに帰ってからチャットで仲良くなってまた1週間ほど会いに行った。でもそのことがパパの耳に入って『勉強の邪魔になるからもうカナダに行ってはいけない』と言われてしまったんだ。僕にとっては初めての恋だった。だからこの映画のカーフーの気持ちはよくわかったよ。実はこの映画に出ると決まったとき、両親はすごくサポートしてくれたんだ。あのとき僕らを引き裂いた罪滅ぼしだと思うよ(笑)」

ーもし、あなたの彼女が妊娠したらどうしますか?
ジェイシー 「結婚したいと思うほどの相手だったら映画のカーフーと同じことをするかもね。僕は若いうちに子供が欲しいんだ。50歳になったとき子どもが2歳とかいうことは避けたいし、自分の孫の結婚式まで見届けたい。世の中の人はみんなそう思っているかもしれないけど、僕は特にその願いが強いんだ。これはいい親孝行にもなると思う。パパに早く孫を見せてあげられるからね」
ーでは、もしあなたのお父さんがこの映画のエリック・ツァンの立場だったら、駆け落ちした息子を許してくれると思う?
ジェイシー 「多分、『お父さん助けて〜』と電話が来るのを待っていると思う。僕が息子の立場だったらきっと電話してしまうと思うし。息子と父親の関係とはそういうもので、助けてほしいときに助けを求めるのが息子で、それを待っているのが父親なんじゃないかな」
ー今はご両親と同居?
ジェイシー 「うん。でもパパは忙しくて家にほとんどいないから、ママと住んでるようなものかな。ラッキーなことに家がわりと広いので実際は一人暮らしに近いんだ」
ーこの映画のカーフーのようになんでも自分でやれる自信はある?
ジェイシー 「僕にはとてもムリだからインスタントラーメンの食べすぎで死んじゃうと思うよ(爆笑)」

ー相手役を演じたフィオナ・シッとは私生活でも仲良しだそうですね。
ジェイシー うん、親友のチェン・ボーリンと一緒に日本で遊んだこともあるよ。たまたま同じ時期にフィオナとボーリンが仕事で日本にいることがわかって、でもこのふたりは友だちじゃないから、僕が日本に来て合流したんだ。食事をしたりして楽しかった」
ーフィオナはとても魅力的だけど、ジェイシーから見てどんな女優さんですか?
ジェイシー 「ハッハッハ。日本にだって可愛くてキュートな若い女の子がいっぱいいるじゃない? あ、フィオナの話ね。彼女は女優としてこれからさらに成長してもっともっとよくなると思う。『早熟 青い蕾』以降は商業的な映画に出ているみたいだけど...。僕は映画のオファーがあったとき相手役は誰ですか?と必ず聞くんだ。というのも、僕とフィオナの共演作を作れるのはイー・トンシン監督だけだって思っているから。デビュー2作目でここまでの演技ができたのは監督のおかげだから、敬意を表わすためにも他の監督の映画でフィオナと共演したくないんだ」
ーでは「早熟 青い蕾」の後日談をイー・トンシン監督で撮るのはどう?
ジェイシー 「それは僕も前から考えてるんだ。他の映画で忙しくて実現できずにいるんだけど。次はもっとコメディタッチがいいな。カーフーが他の女の子とデートしようとして子どもを両親にあずけて...なんて話とかね。赤ちゃんの登場によって親たちの世代も若返って、新しい事件が次々と起こる楽しいコメディになると思うんだ」
ー面白そうですね、ぜひ実現させて下さい。最後に、これからの夢は?
ジェイシー 「たくさん映画に出たい。2枚目のアルバムも制作中なんだ。日本の映画にも出てみたいのでぜひオファーを下さい。僕はオープンな人間だからなんでもやるよ。楽しい感じのキャラで、できれば撮影中に日本語を学べる役がいい。『ドラマ−』という映画に出てドラムを学べたように、映画が終わったら日本語がペラペラになっちゃうような役があったら最高だね!」
1982年12月3日、米ロサンゼルス生まれの香港育ち。178cm、AB型。父はジャッキー・チェン、母は元女優のリン・フォンチャオ。10代の頃から音楽を学び、2002年に香港でシンガーソングライターとしてデビュー。アルバム「Jaycee 房祖名」を発売。その後「花都大戦 ツィンズ・エフェクト?」(04)で映画デビュー。「早熟 青い蕾」(05)「ドラマー」「インビジブル・ターゲット」(07)などに主演する。デビュー当初は親の七光りと言われていたが、持ち前の素直な性格で人気者になり最近は演技的にも高く評価されている。「陽もまた昇る」(07)が2008年の東京国際映画祭で上映される予定。英語、北京語、広東語を話し、日本語も勉強中。
ミニバスの運転手の父(エリック・ツァン)とウェイトレスの母(テレサ・モウ)のもと愛されて育った高校生カーフー(ジェイシー・チェン)は、あるパーティでお金持ちのお嬢様ユーラン(フィオナ・シッ)と出会い一目惚れ。想いが通じデートを重ねるがやがてユーランが妊娠してしまう。弁護士であるユーランの両親(アンソニー・ウォン、キャンディス・ユー)はそれを知って激怒。引き裂かれそうになったふたりは駆け落ちして自分たちだけで子どもを産もうとする。