設楽統のこの映画にしたら? 最終回「設楽統を作り上げた映画たち」
2017年5月2日

――今回は最終回ということで、設楽さんを作り上げてきた映画を振り返っていただきたいと思います。

1980年代終わり、高校生の時に地元のレンタルビデオ店でバイトをしていました。映画が家庭で観られる時代になったころですね。僕もビデオ借り放題だったので、何の前情報も入れずに映画を楽しんでいました。今と比べると当時のレンタルビデオ店には置いてある本数が圧倒的に少なかったんですけどね。

――当時、影響を受けた映画は?

10代の頃は青春グラフィティが大好きでした。中でも「ルーカスの初恋メモリー」(’89)は大好きな作品。頭はいいけれど身体は小さい少年が2歳上の女の子に恋をして「自分も強くなりたい!」と奮起します。「恋しくて」(’87)は男勝りなヒロインが幼なじみの男の子に片思い中なんですが、彼は学校のマドンナに恋をしていて…。ヒロインが気持ちを隠し、彼のためにキスの練習台になってあげるシーンは切なかった。手元に置きたくてビデオを買ったほどのお気に入りの映画です。どちらも淡い恋心が描かれていて、映画全体が柔らかい光に包まれているような気持ちいい映画でしたね。そしてもう一作品、「ビッグ」(’88)の切ないファンタジーも好きな世界観。少年の心をもった35歳の男という複雑なキャラクターを、トム・ハンクスが無邪気な表情や仕草でみごとに体現していて、印象に残っていますね。僕にとって、この3本は、今でも見返す青春時代の不動の3本です!

――その後、日村さんとバナナマンを結成するわけですが、映画との向き合い方は変わりましたか?

10代後半から20代にかけていろんな人と知り合い、知識がぐっと広がりました。今みたいにネットやSNSで情報を仕入れるということもなかったから、どんな映画が面白いかはすべて友人から教えてもらいましたね。これまでは単なる娯楽として楽しんでいた映画ですが、バナナマン結成直後は、映画に“お笑い”という要素を求めるようになってきて。日本映画を観出したのもこの頃です。

――特に印象に残っている映画を教えてください。

「太陽を盗んだ男」(’79)は、当時、美容師さんに教えてもらった作品。国会前でのカーチェイスとか、今では考えられないほどド派手なロケが展開していて。とにかくパワーがみなぎっている映画でした。大林宣彦監督の尾道三部作最終章「さびしんぼう」(’85)は「ビッグ」にも通じるファンタジー。劇中に流れる「ショパンの別れの曲」が耳に残り、その後、僕らの音楽を取り入れたネタ作りのきっかけにもなった作品です。ほか20代のころに大好きだった映画には「12人の優しい日本人」(’91)や「遊びの時間は終らない」(’91)…などなど。

監督や役者を追いかけて観るというのでなく、「いい」という情報を聞きつけたら、借りて観ていました。昔も今も広く浅く映画を観ている僕ですが、“知りたい欲”がとても強いんです。特にこの時期に観た映画は、ネタ作りの“勉強”でもあったから、とにかく早く自分の中に吸収したかった。映画を観ながら「早く終われ」と思っていたぐらい(笑)。まさしく、観た映画が血となり肉となっていった時代です。

――ネタ作りに影響した映画として、他に何か挙げるとすれば?

映画好きなスタッフさんに教えてもらったウーピー・ゴールドバーグ主演の未公開映画「ザ・テレフォン」(’88)は、“電話”というアイデアひとつで最後まで観せる構成にシビれました。星新一のショートショートのような世界観で、ゴールドバーグの一人芝居にも圧倒されます。ゾッとさせられるエンディングは、僕らの「留守電」というコントのベースにもなっています。日村さんの家の電話に僕からの留守電が何件も入っていて、その留守電の中でどんどん事件に発展していくお話。メチャクチャ怖い展開のコントです。

――まるで一本の映画みたいです。その後はどんな映画を?

クエンティン・タランティーノ作品や「ユージュアル・サスペクツ」(’95)といった伏線が緻密に張り巡らされたサスペンスや、話の構造が面白い映画を楽しむようになりました。また、この頃は「ローマの休日」(’53)や「ショーシャンクの空に」(’94)、「ライフ・イズ・ビューティフル」(’98)などの名作もいろいろ観ましたね。20代の頃は勉強のためにいろんなジャンルの映画を見漁っていたけど、評価の高い名作群をじっくり観てみると、ただただ目の前の出来事に感動できるというか、やはり素晴らしいと再認識しました。

――そうして30代以降はお仕事もお忙しくなってくるわけですが。

映画鑑賞を“勉強”と位置付けていた20代と違って、30代は気持ちのゆとりが出てきた時期のように思います。映画館で大作をゆったりと観たいと思うようになりました。今の僕にとって映画鑑賞は“安らぎ”。何なら寝ても構わない(笑)! この連載でも何度も紹介してきたようなSF超大作やアメコミ映画、特にクリストファー・ノーラン監督の「バットマン」シリーズは大好きです。

――最近映画館で観た作品を教えてください。

「ラ・ラ・ランド」(’16)を劇場で観ました。最後10分間も感動しますが、僕は夢を追っていた2人の歯車が狂い出す描写になぜか泣いてしまって。映画って、自分の精神状態でセリフの響き方が変わりますよね。きっと10年後の設楽統にとって、BDで観る「ラ・ラ・ランド」はまた違って見えるんだろうな。時代や自分の変化に合わせて、作品への思いも変わってゆく――それこそが、映画を楽しむ醍醐味かもしれません。

――約3年にわたり、さまざまな映画を紹介してきましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

僕がこだわってきたのは「作品をけなすことはしない」ということです。モノを作る苦労は僕も少しは分かるから。昔は、自分の作ったものがどう受け取られているかということに対していろいろ思うところもあったけど、今はちょっと違う。受け取る側はどんな状況で見ても構わないと思うんです。例えばバナナマンのDVDをガッツリ見ている人もいれば、流し見している人もいるかもしれない。文句を言う人がいてもいいや、って思うんです。

どんな作品にもリスペクトをもって接するようにしています。だからけなしたくないんですよね。ただ、ヒロインがかわいくないとイヤかも(笑)。

――最後に読者のみなさんにメッセージをお願いいたします!

面白い映画には嫉妬もしたし、同世代や年下の監督の活躍が刺激にもなりました。作品ひとつひとつを深く掘り下げて考えることもなかったので、貴重な時間になりました。約3年間、本当にありがとうございました!

■プロフィール
1973年、埼玉県生まれ。’93年に日村勇紀とバナナマン結成。「ノンストップ!」(フジテレビ系)で司会を務めるほか、「バナナマンのせっかくグルメ!」(TBS系)、「バナナ♪ゼロミュージック」(NHK総合)、「沸騰ワード10」(日本テレビ系)などレギュラー多数。

■バナナマンinformation
バナナマン、おぎやはぎ、オードリーの3組が出演するトークバラエティー「もろもろのハナシ」(フジテレビ系)のレギュラー番組に。毎週水曜深夜0時25分からオンエア中です!! 2016夏ライブDVD「bananaman live 『腹黒の生意気』が絶賛発売中

© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate.
撮影/杉 映貴子