設楽統のこの映画にしたら? Vol.36「スティーブ・ジョブズ」
2016年6月30日

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IT界のカリスマの人間力とは…!?

――今回は「スティーブ・ジョブズ」を選んでいただきました。まず最初に、設楽さんご自身はアップルユーザーですか?

iPhone、iPad、iPodは持っていますよ。劇中に出てくるiMacも買ったことがあります。といっても、パソコンはそんなには使いこなせないんですけど。iMacは低価格で形もかわいくて、当時、若い人だけじゃなくて主婦にも人気でしたよね。だからiMacの発表会シーンは「スティーブ・ジョブズと僕の人生が交差した!」とアガりましたよ。観る前は“あまりよく知らない偉人の映画”みたいなイメージでしたが、このシーンでジョブズという存在がぐっと身近になりました。

――観ての率直な感想は?

第一印象は「ジョブズってこんなに怒る人だったんだ!?」ってこと。というのも、それまでのジョブズって、実際の映像を見る限り、温和で物静かな人だと思ってたんです。でも映画を観て驚きました。最初から最後までずーっと怒ってるんですよ。しかもジワジワ相手を追いつめる感じで……観終わった後はちょっとぐったりしちゃいました(笑)。

――ジョブズを演じているのは、マイケル・ファスベンダー。200ページもの台本をものにするため、7週間ものリハーサルを行なったそうです。

でしょうね〜! 圧倒的なセリフ量でしたし。もうひとり芝居の舞台を観ている感じで。15年にわたってだんだん年齢を重ねていく感じとか、役作りも見事でした。

――監督は「トレインスポッティング」のダニー・ボイル。映像や音楽にこだわる監督としても有名です。

良い意味で裏切られたのは、肝心の発表会はばっさりカットし、会見前の舞台裏だけで構成されていること。潔い! 僕らもネタでよくやりますが、物事の“直前”ってやっぱりドラマチックになる。そして、3つの時代を16mm、35mm、デジタルとカメラを変えて撮っているそうで。ニュース映像や衣装も当時の空気感を感じられるものになっていたり、発表会の楽屋が豪華になっていったりとストーリー以外の部分にもこだわりが感じられ、会話劇だけど単調にならずに最後まで惹き付けられました。

――ジョブズが亡くなったのが2011年。死んでからこんなに早く伝記映画ができるというケースは、アメリカならではというか、日本ではちょっと考えられないですよね。

ですね。でもジョブズはここ10数年で、世界を二分する大発明をした。人類の歴史を振り返る上で欠かせない人だから、早くに伝記映画ができたのもうなずけます。しかも発明を始めてからたったの15年で目標を成し遂げてしまう。ジョブズの偉人ぶりはもちろん、この15年間のIT革命自体もすごい勢いだったんだなと、改めて思いました。

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――同じ男として、ジョブズはどう思いましたか?

周りの言うことを聞かないし、恋人との間にできた娘は認知しない。素晴らしい功績を残した人だけど、素晴らしい人じゃなかったんだなって。こんな人が上司だったらしんどいかもしれないけど、それでもみんなが彼についていくのは、天才のそばにいることで“自分も時代を動かしている”という感覚があったんだと思うんです。

――リーダーシップとは何かを思い知らされますね。

みんなで一斉に動き出すより、1個の脳が突出していて、それに周りが合わせていく方がいいですよね。誰かが率先して前に突き進んでいかないと物事がまとまらないし、プロジェクトの色や特徴ってなかなか出てこない。この映画では、ジョブズが決めたルールのもと周りが動いて、目的をちゃんと成し遂げることが商品の“信頼”につながるわけで。だからジョブズがこだわりはじめたら周りはついていくしかない。技術者というよりもはやアーティストですよね。

――ということは、設楽さんは最終的にジョブズに共感したと?

物語が進むにつれて、彼なりのリーダーシップが分かってきて、最後「スピーチで部下たちへの感謝のコメントを入れて欲しい」という部下の主張をジョブズが拒否するシーンなんて、完全にジョブズ側の気持ちになって観ていました。言ってみれば、「スゴいものを見せてほしい」と心待ちにしているお客さんにとって、社内の人間関係なんて関係ないわけで。もちろん感謝はしていたと思いますよ。でも新作発表の場で過去を振り返るべきではないというジョブズの気持ちは分からないでもない。常に時代の一歩先を読み、ユーザーを驚かせるものだけを追い求めたジョブズの信条は、「ポケットに1,000曲入ったら楽しいだろう?」みたいなセリフの端々に表れています。

――そう考えると、ジョブズは人間として素晴らしい人ではなかったけど、心底悪い人間ではなかった、ということですかね。

彼が情に流されやすい人だったらどこかでつぶされただろうし、何も生み出せなかったはず。とにかくブレずに突き進むことが彼のパワーの源だったんでしょうね。頭がキレて人間くさい――そんなジョブズの人柄が、コンピュータだけど遊び心のあるアップル製品に反映されている気がしました。

■今月の一本

「スティーブ・ジョブズ」
「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督がIT企業アップルの創業者スティーブ・ジョブズの半生を描いた伝記映画。1984年の「Macintosh」、1988年の「NeXT Cube」、1998年の「iMac」、それぞれの新作プレゼンテーション当日の舞台裏を通して、天才ジョブズの妥協を許さない徹底した仕事ぶりを浮き彫りにしていく

監督・製作/ダニー・ボイル 原作/ウォルター・アイザックソン
脚本/アーロン・ソーキン
出演/マイケル・ファスベンダー ケイト・ウィンスレット セス・ローゲン ジェフ・ダニエルズ

■プロフィール
1973年、埼玉県生まれ。’93年に日村勇紀とバナナマン結成。「ノンストップ!」で司会を務めるほか、「そんなバカなマン」「モシモノふたり」(共にフジテレビ系)、「沸騰ワード10」(日本テレビ系)、「クレイジージャーニー」(TBS系)、「バナナ♪ゼロミュージック」(NHK総合)などに出演

■バナナマン information
「bananaman live 2016 腹黒の生意気」が8月12日(金)~14日(日)東京六本木・俳優座劇場にて開催決定!! また設楽がマンハッタンに住む主役犬マックスの声を担当するアニメーション映画「ペット」は8月11日公開です。

Film (c)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
Artwork and Packaging Design (c)2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

撮影/杉 映貴子