誰だって負けたくないし、できれば勝ちたいと思いながら生きている。
でももし負けたら...そう思って一歩を踏み出せない、そしてやりたいことや夢を諦め、日常に埋もれてしまう大勢の人がいる。
夢をもって生きろと大人は子供に諭すが、夢を諦めず大人になってしまった人を大人はいつまでも夢を見てと鼻で笑う。
自分にはなんらかの才能があると信じ、しかしその才能がなんなのかはわからないまま漠然とした自信と不安を抱えながら生きる若者がいる。
夢を追うとは、自分の可能性を信じるとは、どういうことだろうか。
それはとてもリスキーなことであり、間違えばすべてを失い、そして後悔を抱えて生きることになる。
身も蓋もないことを言えば、現実的に生きようとするのなら夢なんか見ないほうがいい、理想なんて追わないほうがいい。しかし、分かってはいても折り合いをつけられない人種はいつの時代にもいた。地に根を張り生きることができず、かといって思い描いた自己像を叶えることもできず。現代において、そのような生き方を見て人は「負け組」と蔑む。
5月28日公開の「マイ・バック・ページ」はそんな情熱と夢にあふれ、「○○にオレはなる!」と某少年漫画の主人公のような熱い志をもった男たちの挫折の物語だ。
舞台となる学生運動や主演の妻夫木聡と松山ケンイチの演技合戦など、映画として語るべきところは多々ある本作だが、ある種の人間にとってはそれ以上に迫るものがある。何かを求め、辿りつけず、かと言って諦めることもできない。心にわだかまりと行き場のない飢餓感を抱えながら、オレはこんな生き方でいいのかと自問自答し続ける者たちにとってあまりにも主人公達の感情が生々しく伝わってくる。
映画雑誌編集者として失格だとは思うけど、「この作品はオススメです!」なんてことは言えない。が、なりたい自分になれなかった人々に見てほしい。可能性の塊である10代に見てほしい。
ハリウッド映画のようにカタルシスは得られない。見終わった後、きっと胸が裂けるような思いにとらわれると思う。でも、彼らの生き様を見て得られるものは絶対ある。人生を戦い生きるということの意味を改めて考えることができるはず。
繰り返しになってしまうが、はっきり言って、この作品は万人にオススメできない。なぜなら、はっきりと人生の挫折が描かれているからだ。
でも見てほしい。挫折を味わったことのある人たちに。そしてまだ未来を知らない人たちに。
無駄に長い文章でおなじみの私も今回をもって終了! それではまたいつかどこかで。越乃寒梅
「マイ・バック・ページ」
学生運動が最後の輝きを見せた1969年から70年代の日本。
ジャーナリストに憧れ新聞社に入るが、大衆週刊誌に配属され日々鬱屈を抱える沢田(妻夫木聡)と、学生運動に憧れ自身も闘争のただ中に身を置こうとする梅山(松山ケンイチ)。向かう先は違えど「何か」を目指しもがく2人が出会ったことから、お互いの人生を狂わせていく過程を描く。
5月28日(土)全国ロードショー
新宿ピカデリー、丸の内TOEI 他
©2011映画『マイ・バック・ページ』製作委員会